12月17日、カタール・ワールドカップの3位決定戦が行われ、前回大会準優勝のクロアチアとモロッコが対戦した。クロアチアが前半に先制すると、モロッコもすぐに追いついたが、後半に勝ち越しに成功したクロアチアがそのまま2-1で試合を終わらせ、3位に入賞した。
上写真=決勝ゴールを決めたクロアチアのオルシッチを仲間が祝福(写真◎Getty Images)
■2022年12月17日 カタールW杯 3位決定戦(ハリファ)
クロアチア 2-1 モロッコ
得点者:(ク)ヨシュコ・グバルディオル、ミスラフ・オルシッチ
(モ)アクラフ・ダリ
さすがのクロアチア、最後まで戦ったモロッコ
この2チームは大会初戦で対戦し、そのときの結果は0-0だった。およそ1カ月後の再戦をより警戒していたのは、クロアチアの方だったかもしれない。モロッコは大会に旋風を巻き起こし、決勝トーナメントでスペイン、ポルトガルを沈めて前回の対戦時よりも大きな自信を手にしているはずだからだ。
惜しむらくは準決勝からモロッコは中2日、クロアチアは中3日と日程的な差が生じたことだが、モロッコは負傷者が続出している中でもアグレッシブな姿勢を示した。
3位か、4位か。勝って終わるか、負けて大会を終えるか。戦前、モロッコのレグラギ監督は『世界3位』の称号の価値を語っていたが、その思いはクロアチアも同じだった。試合開始直後から両チームとも激しいプレーをピッチでみせた。スコアが動いたのも開始早々だ。
先制点はクロアチアだった。7分、見事な連動からネットを揺らす。敵陣やや左で得たFKの場面。モドリッチがダミーになってマイェルが蹴ったふわりと浮かすボールをペリシッチがゴール前にヘッドで折り返す。無理な体勢で体をひねりながら折り返すというプレーに、堅守を誇るモロッコ守備陣を虚を突かれたか。そこへグバルディオルが豪快なダイビングヘッド。ゴール左に突き刺し、クロアチアがリードを手にした。
その2分後、モロッコが追いついてみせた。敵陣右サイドで得たFKで、ツィエクがゴール前にボールを送ると、ひとりで壁になっていたマイェルに頭で触られる。ボールは高く舞い上がり、落下地点にポジションをとったダリがヘッド一閃。叩きつけるようにシュートが名手GKリバコビッチを破った。
ここからスタンドの9割を埋めたモロッコサポーターの後押しを受けて、攻勢を強めたいモロッコだったが、クロアチアはまったく慌てなかった。巧みに相手の勢いをいなし、逆にじわりじわりとボールを持つ時間を増やしていく。
勝ち越しゴールが生まれたのは、42分のことだった。右サイドから左に展開したボールをリバヤがオルシッチにつなぐと、右足でカーブを描くシュートを放つ。ボールはわずかにGKブノが触られたものの、ポストの内側を叩いてゴールに吸い込まれた。
鮮やかなゴールで逆転したクロアチアは、後半も巧みに時間を使っていった。試合終盤にはモロッコが怒涛の攻撃を受けたものの、ゴールをカギをかけ続けた。試合はそのまま2-1で決着した。
前回準優勝のクロアチアは地力を示したと言えるだろう。相手の前向きの守備をスッとかわすパスワーク。攻め気を逆手にとって深くボールを差し込んでチャンスを広げるプレー。日本戦でも見せていたが、ゲーム全体をコントロールしつつ、慌てず騒がず要所を締めていく様は、さすがのひと言。3位になるにふさわしい戦いぶりだった。
対するモロッコも称賛に値するプレーを示した。日程の不利やケガ人が続出する中で最後は勝利をつかめなかったなかったものの、大会の主役の一国として大きなインパクトを残したことには変わりはない。アフリカ勢初4強進出という結果は、しっかりW杯の歴史に刻まれた。
試合後のピッチでは、健闘を称え合う両チームの姿があった。多くのモロッコサポーターが誇り高い自国の代表チームはもちろん、クロアチアの選手たちにも拍手を送っていた。
取材◎佐藤 景