カタールW杯のファイナリストが決まった。アルゼンチンとフランスだ。

勝った方が、「チャンピオン」となる。負けた方は、そのままファイナリストとして終わり「セカンド・プレイス」という呼称が与えられる。時には「グレート・ルーザー」と呼ばれることがあるかもしれないが、チャンピオンとは程遠い。だから「優勝」と「準優勝」の距離は途方もなく遠い。

【映像】ついに決勝!王者が決まる!アルゼンチンvsフランス

アルゼンチン6回、フランス4回。これはこの試合を含めて両国がW杯に進んだ数だ。

アルゼンチンは過去5度の決勝進出で2回の勝利。勝率は40パーセント。3度の敗戦相手はウルグアイ、ドイツ(当時の西ドイツ)、ドイツ。

フランスは過去3度の決勝進出で2回の勝利。勝率は66パーセント。唯一決勝で負けた相手はイタリア。ジダンの退場の瞬間にフランスの夢が消えたあの試合だけだ。

だから今度もフランスが有利ーーなのだろうか?

アルゼンチンとフランスのW杯での直接対決は3度。アルゼンチンの2勝1敗。1930年の第一回大会のグループリーグ、1978年のアルゼンチン大会のグループリーグでアルゼンチンが勝っている。2014年のノックアウトステージ・ラウンド16ではフランスが壮絶な「撃ち合い」を制してラウンド8に進んだ。直接対決ではアルゼンチンが勝率66パーセント。

だから今度もアルゼンチンが有利ーーなのだろうか?

では、この試合はどのような試合になるのだろう?何が注目ポイントなのか?我々は何を見守る必要があって、試合の鍵をどこに探せばよいのだろう?

誰もが想像できるように、それは「メッシ」対「エムバペ」だ。両チームは、異次元の選手をそれぞれ抱えている。異次元のボールタッチとテクニックを擁するメッシと、異次元のスピードで全てを破壊するエムバペ。

この2人が、自身の持てる能力を全て発揮できる試合となったのなら、壮絶な打ち合いとなるだろう。いわゆるオープンな戦いになる。

メッシが撃った直後にエムバペが縦を突破し、エムバペがシュートを撃ち込めば、その直後にはメッシにボールが渡ってアルゼンチンの決定機がやってくる。そんな試合だ。

35歳のメッシが有終の美を飾り、自身のストーリーを完結させるのか?それとも今後の10年を担うエムバペが、メッシに引導を渡してエムバペのストーリーに大きなランドマークを築くのか。

もちろんサッカーは2人でやるわけではないので、単純な構図にはならないだろう。現実的にはメッシからボールを貰う選手や、メッシにボールを渡す選手の出来が大きく試合を左右する。アルバレスがそうだし、デパウルもそうだ。

またエムバペの突破に注意を払うがために、マークやカバーに人数をかけ過ぎると、当然周りの選手にチャンスが転がりこんでくるだろう。エムバペ自身がボールを受けなくても、エムバペが作った渦の中で勝負を決めるプレーが出現するはずだ。グリーズマンやデンベレがそうなのかもしれない。

そうやって異次元の2人が渦の中心となって、2つのチームが動いていけば、とてつもなく面白いサッカーが見られることだろう。

サッカーに戦略と戦術と駆け引きがある以上、「相手に自由にさせない」ことを最優先に選択することも起こり得る。自分達の長所がなくなってもいいから相手の長所を「消す」戦術。「勝ちたい」以上に「負けたくない」という思考が入ると試合はその時クローズされ、淡々と時間が過ぎていく。これが「W杯の決勝戦は面白い試合が少ない」と評される所以だ。

だが、今回は「オープン」な決勝戦を願おう。なんといっても何十年に一人しか出てこないメッシとエムバペが同時にW杯のピッチに立つ最後の試合だから。

アルゼンチンのエンブレムの上に輝く星は2つ。

フランスのエンブレムの上に輝く星も2つ。

3つ目の星はどちらのエンブレムの上で輝くのだろうか?

(ABEMA/FIFAワールドカップ カタール 2022)