ついにカタール・ワールドカップのファイナルを迎える。前回王者のフランスと南米王者のアルゼンチンという世界が注目するカードに。どちらが勝っても史上3度目の優勝であり、キリアン・エムバペとリオネル・メッシというスーパースターを擁していることも共通する。
興味深いのは、エムバペが23歳とまだまだ伸び盛りの年齢であるのに対して、メッシは35歳。この試合を持って代表引退の可能性も伝えられるだけに、アルゼンチン国民の期待がメッシを中心とするチームに注がれているようだ。
ただ、経験という意味ではエムバペも若いながらに前回の優勝メンバーであり、フランスの頼れるエースとして君臨している。
やや心配なのはメッシが15日の練習を休んだという情報だ。一方のフランスはCBのラファエル・ヴァランヌとイブライマ・コナテがコンディション不良、ふくらはぎの痛みを押して準決勝に出場したオーレリアン・チュアメニ、さらにモロッコ戦で得点のテオ・エルナンデズ、キングスレー・コマンも16日の練習を欠席した。
開幕前にカリム・ベンゼマが、初戦の負傷でリュカ・エルナンデズが離脱しており、フランスは20人に満たないメンバーで決勝を戦う可能性もある。
並のチームなら火の車だが、そこは層が厚いフランスだ。最終ラインもバンジャマン・パバール、ジュル・クンデ、ウィリアム・サリバ、エドゥアルド・カマビンガといった4バックで十分に戦えるだろう。
中盤は準決勝を欠場したアドリアン・ラビオが復帰しており、ユースフ・フォファナ、アントワーヌ・グリーズマンとトライアングルを組むことになるか。グループステージ3試合目のチュニジア戦にしか出ていないマテオ・ゲンドゥジの抜擢もあるかもしれない。
フランスもアルゼンチンもタレント力が高いだけでなく、試合巧者ぶりを見せて勝ち上がってきている。準決勝でクロアチアに3-0で完勝したアルゼンチンに比べると、モロッコと対戦したフランスは最終的に2−0としたが、ユーゴ・ロリスの度重なるビッグセーブが無ければ、後半は追いつかれてもおかしくなかった。さらに中4日のアルゼンチンに対して、中3日という不利もある。
それでもフランスはエムバペとウスマンヌ・デンベレという両翼の突破力を武器に、シンプルにチャンスを作れる。そしてここまで4得点のオリビエ・ジルーというベテランのストライカーが健在である強みもある。
ラビオが戻ることで、中盤からの飛び出しも迫力を増しそうだ。右SBがパバールになった場合は、同サイドからのクロスが多くなるかもしれない。
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一方のアルゼンチンはメッシと若き相棒のフリアン・アルバレスが非常にバランス良く特長を活かし合っており、アレクシス・マク・アリステルやエンソ・フェルナンデスと絡みながら、大エースのメッシが輝きを放っている。
システムは4-3-3と4-4-2を使い分けているが、フランスの中盤を封じるためにも、準決勝と同じく4-4-2で臨むと予想される。
4-4-2といっても完全なフラットではなく、ダブルボランチのレアンドロ・パレデスとE・フェルナンデスに、右サイドハーフのロドリゴ・デ・パウルがインサイドに絞り、SBのナウエル・モリーナが外側のレーンを使うことが多くなりそうだ。ただし、対面にはエムバペがいるので、そう簡単に攻め上がることはできない。
モロッコは右SBのアシュラフ・ハキミが勇気を持って、攻撃時はエムバペより前にポジションを取っていた。アルゼンチンのリオネル・スカローニ監督がどういった指示をモリーナに伝えるかは試合のキーポイントの1つだろう。
ただし、フランスの右翼にはデンベレがいるので、こちら側の警戒も怠れない。累積警告から戻ってくるマルコス・アクーニャのスタメンは濃厚だが、攻撃的なキャラクターで知られるだけに、デンベレとの立ち位置の駆け引きも主導権に影響しうる。
ともに5得点のメッシとエムバペの得点王争いも注目されるファイナル。90分の決着は理想的だが、GKのロリスとエミリアーノ・マルティネスも好調で、拮抗した戦いも予想されるだけに、延長戦、さらにPK戦決着も十分に考えられる。
フランスにはモロッコ戦で活躍したマルキュス・テュラム、アルゼンチンにはラウタロ・マルティネスという強力なジョーカーもいる。ディディエ・デシャン監督とスカローニ監督の選手交代も勝負の鍵を握る。
過密日程の7試合目ということで、体力的にもぎりぎりの状況にあるはずだが、中東の地で、ここまで熱い戦いが繰り広げられてきたW杯の最後を飾るに相応しい熱戦になることを期待している。
取材・文●河治良幸