どうやら本気のようだ。ロシア・サッカー連合(RFU)のアジア・サッカー連盟(AFC)への転籍だ。
ロシア通信社『TASS』は現地12月24日、同連盟が欧州サッカー連盟(UEFA)からAFCへの転籍に関する最終決断を、27日火曜日に行なわれるオンラインビデオ評議会で下すと報じた。
RFUのアレクサンデル・デュコフ会長は「欧州において我々は常に強豪であり続けた。だが現在の制裁はいつ終わるとも知れず、欧州の舞台に戻れる保証はない」とコメント。RFUはロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、今年2月28日にUEFAからあらゆる国際試合への参加禁止を通達された。クラブレベルでのチャンピオンズリーグはもちろん、ロシア代表はプレーオフに進出していたカタール・ワールドカップ予選への参戦もキャンセルされ、本大会への道を断たれている。
EURO2024予選へのエントリーも許可されず、現時点で情勢に変化はない。チーム強化に苦心するロシア代表は、この10か月間で非公式にキルギス、ウズベキスタン、タジキスタンと3つの練習試合を実施したのみである。デュコフ会長は「国際大会への参加を念頭に入れるならば、転籍という選択肢があるだろう」と話し、「AFCは受け入れの準備をしてくれている」という仰天発言まで飛び出した。
加えてデュコフ会長は、現在ロシア代表を率いるヴァレリ・カルピン監督の考えを代弁。「ヴァレリとは何度か話している。AFCへの転籍に関しては好意的な意見をもらっているよ」と明かした。
一連の報道を受けて、ロシア国内は賛否両論が渦巻く大混乱をみせており、国内メディアが関係者や著名人たちの言葉を続々と紹介している。
ロシア政府の文化スポーツ大臣を務めるドミトリ・スビスチェフ氏は「まだ議論の余地は大いにあるが、選手たちの競技力維持を第一に考えるなら、結論を急ぐべきだ。もし転籍が実現すれば、UEFAは経済的かつ競技的な観点で、ロシアという大きな損失を被るだろう」と論じた。
さらに、元フィギュアスケートの金メダリストでロシア連邦議員のイリナ・ロドニナ氏も転籍を支持。「今回のワールドカップではアジアやアフリカ勢の台頭が顕著だった。ロシア人選手に対する考え方に歩み寄りがあるならば、アジアへの転籍は良いもののように感じられる」と言及した。
一方、国際主審であるセルゲイ・カラセフ氏は「チャンピオンズリーグを諦めろと言うのか? 審判にとっても選手にとってもきわめて厳しい判断になる」との声明を寄せ、元ロシア代表GKのセルゲイ・チェプチュゴフ氏は「何を焦る必要があるんだ。一大事だろう。砂時計を置いてじっくり議論すべきだ」と諭した。
そして、2002年日韓ワールドカップにロシア代表GKとして出場し、グループステージの日本戦にも先発したルスラン・ニグマトゥリン氏は怒りを滲ませる。「AFCに移るなんて、もし実現したら大災害だ。ロシアは欧州であってアジアじゃないだろ? そもそもアジアの国々が我々を手を広げて歓迎してくれるわけがない」と吐き捨てた。
前ロストフ監督のアンドレイ・コベレフ氏のオピニオンが、もっとも的を得ているかもしれない。
54歳の元ロシア代表MFは「待ってほしい。我々はUEFAからだけでなくFIFAからも制裁を受けているんだ。アジアへの転籍自体が許されるか不透明だし、オーストラリアや日本などは我々とプレーしたがらないだろう。FIFAが譲歩するとは思えない」と断じ、「AFC転籍など解決策にはならない。UEFAへの復帰をまだ待つべきだ」と言い切った。
2026年のアメリカ、カナダ、メキシコが共催する北中米ワールドカップから、本大会の出場枠は現行の32枠から48枠に増加され、アジアは4・5枠から8枠に大幅増される見通しだ。
RFUはこのあたりも視野に入れ、AFC内に少数ながら存在するロシア支持層を取り込みたい考えか。デュコフ会長が発した「AFCは受け入れの準備をしてくれている」とのコメントは、なんとも気になるところだ。
はたして、27日にどのような最終決定が下されるのか。もしAFC転籍が決まった場合、それを受けてAFCやFIFAがいかなる見解や反応を示すのかも注目される。
なお、過去には旧ソ連解体後の1994年にキルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、カザフスタン、タジキスタンの中央アジア5か国がAFCを選択(カザフスタンは2002年にUEFAへ転籍)。2006年にはオーストラリア、グアム、北マリアナ諸島がAFCに加わった。以降、オーストラリア代表はAFCでアジア予選を戦い、2010年から4大会連続でワールドカップ本大会出場を果たしている。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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