投手・大谷翔平の快進撃が止まらない。6月29日(日本時間30日)に、今季13試合目となる先発登板で5回2/3を投げ、2試合連続2ケタ奪三振となる11個の三振を奪い、5安打無失点で7勝目。今季自己最速タイの101マイル(162.5キロ)、同じく今季自己最多タイの108球を投げる力投だった。降板時には、6回を投げきりたかったというように悔しさもにじませた大谷だったが3試合連続、イニングにして21回2/3連続無失点という快投ぶりに、球場のファンはスタンディングオベーションで出迎えた。まだシーズンも折り返し前という中、自身メジャー初となる2ケタ勝利まであと3つと迫る快進撃だが、これを支えているのが今季、その切れ味を増した“第4の決め球”カーブだ。
【動画】相手打者もびっくりした大きなカーブ「12 to 6」
大谷の球種だが、160キロ前後をマークするストレートは威力十分。いわゆる「糸をひくような」きれいな回転ではなく、どちらかと言えばやや回転軸が傾き、右打者に取っては外角に逃げるような「まっスラ」系統だ。本人もこれをさらに意図的にカットボールとして投げ込むこともある。逆にMLBの投手が好んで投げる、右打者の内角向かって沈むツーシーム、シンカー系のストレートは、ほぼない。試合の節目となるポイントで、大きな声を出しながら投げ込む160キロ級の速球は、威力十分だ。今季も全投球の39.1%と投球の柱になっている。
続いて頼りにしているのが、ストレートとともに3割台(30.6%)も投げているスライダーだ。通常の投げ方だけでなく、時折腕を下げて横振り気味に投げることもあり、水平方向への変化も自由自在。右打者の外角に逃げて空振りを奪うだけでなく、左打者に対しては外角のボールゾーンからストライクゾーンに入れてくる「バックドア」も多用する。あまりの変化量に、ストライクゾーンから2個ほど外れるボールであっても、思わず打者のバットが止まらないこともあるほどだ。
大谷が三振を奪うといえば、想像されるのがスプリットだ。平均球速89.1マイル(143.4キロ)は、ストレートの97.1マイル(156.3キロ)より約13キロ遅い。従来はさらに落差の大きいフォークよりもストレートに近い球速出すことで相手打者を打ち取る球だったが、大谷に関しては落差も十分で、球速差もそれなりにあることからタイミングを外すこともでき、他の投手のチェンジアップ、シンカーに近いものになっているようだ。なお今季の投球割合は14.4%だ。
ここまでの3球種が大谷の軸になっていたが、昨季より3倍以上も割合で増えているのが“第4の決め球”カーブだ。昨季は3.6%だったのに対し、今季は10.9%。実数でも昨季は72球だったのに対し、今季は既に117球も投げている。これまでは周囲も配球にアクセントをつけるもの、という認識だったが、今季は存在感がまるで違っている。
カーブの中にもナックルカーブ、パワーカーブなど、いろいろと種類がある中、大谷が投じるのは縦方向に大きく変化する日本ではドロップと言われてきたものに近い。メジャーでは、時計の「12」から「6」に向かって曲がり落ちる軌道から「12 to 6」という呼ばれ方をする。実際、7勝目を挙げた試合でも「12 to 6」なカーブは投げられ、リリースからの最大落差は69インチ(175センチ)にもなっていた。もちろんマウンドの高さ、リリースポイントの高さということもあるが、頭の上から降ってくるような感覚もあるだろう。球速も平均77.9マイル(125.4キロ)と抑えられ、同じ投手から投げ込まれるものとは思えないほどのスピードと軌道が描かれる。
今季は開幕投手を務めて以来、一度も先発ローテーションを崩すことなくエースとしてマウンドに立ち続けている大谷。ここ3試合では許したヒットは単打ばかりで、ヒヤリとする場面自体が減っている。ストレート、スライダー、スプリット、そしてカーブ。それぞれ微妙に球速、変化にもバリエーションをつけられる大谷からすれば、球種の数は2倍にも3倍にもなる。
(ABEMA『SPORTSチャンネル』)
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