「こんな生活が続けば、病みますよ」「いつかは役人に戻る選択肢も」霞が関を去った若手キャリア官僚が、国家公務員制度担当の河野太郎大臣に訴えたいコト
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 「国会が終わった。課長含めタクシー三昧。自分も倒れずよくやった」「労働問題に関するヒアリング、超過勤務が多すぎとか20年前と同じ内容ばかり」。

 “働き方改革”が進められているはずの中央省庁で働く若手キャリア官僚たちが、Twitter上で悲鳴を上げている。

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 2020年、20代職員の3割が月80時間の“過労死ライン”を超える残業をしていたことが内閣人事局の調査で判明。行政改革担当大臣だった河野太郎氏(今回の内閣改造で国家公務員制度改革に起用)が「若手職員に負担が偏っている実態が見える化できた」と話し、改革に意欲を見せていた。

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 ところが法案や予算案の作成、野党の国会質問に対する答弁書作りなどの業務は依然として重く、今年3月には萩生田光一経産大臣(当時)が「職員たちは徹夜で先生の対応をしないといけない。30分で、これだけの質問(の答弁)はちょっとできないと思う」と苦言を呈する場面も見られた。

 そんな変わらない霞が関に見切りをつける若手は跡を絶たない。10日の『ABEMA Prime』で、2人の元キャリア官僚が生激白した。

■まっすぐな方々と出会えたことが、霞が関で得られた財産

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 2019年まで内閣府に務めていた星野悠樹さんもその一人だ。医学部出身で、医師として働くことも考え免許も取得していたが、社会にインパクトを残すような仕事がしたいと国家公務員を志望。ところが始発電車で帰宅する日々やコロナ禍の今も続くという紙文化・FAX文化などによる時間の浪費に「言葉にできないしんどさ」を感じ、退官した。

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 「“みなし残業”や始発で帰るようなことが毎日のように続き、身体の負担を感じてもいた。心の問題を抱えてしまった方、出産後の育児との両立が難しく、申し訳ないと言って辞めていく女性もたくさん見たし、私自身、“この仕事がいつかは社会の役に立つだろう”と思いながらも、“こんなに非効率な仕事に20代の時間を使っていて本当にいいのだろうか、スキルは身に付くのだろうか、もっとほかにやりがいのある仕事があるのではないか…”という気持ちが芽生えてきてしまった」。

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 いわゆる“外資系コンサル”に転じ、来月からはイギリスに留学する予定だ。それでも「政策立案や公共政策、さらには“霞が関”には今でも強い興味を抱いている。将来、また何らかの形で関わりたい」と話す。

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 「少しずつだけど、社会を前に進められているのかな、という実感があったし、自分の仕事が新聞の一面を飾った瞬間の喜びは他に代え難い。やっぱり他にはない、面白い仕事だ。戻るという選択肢もあるし、NPOなどの立場から霞が関に関わる方もいる。今から1年間、そのあたりを勉強し、模索したい。

 やはり民間側にとっては、元官僚は能力、ポテンシャルはもちろん、ある種、ハードな働き方もできるだろうという期待感がある。特に20代の転職は多く、“引く手あまた”だし、年収を上げることもできる。そして民間企業に行ったとしても、自分の利益よりも、やっぱり社会に対して良い影響を与えたいという志を持って仕事をしている人が多いように思う。そんなまっすぐな方々と出会えたことが、霞が関で得られた財産だ」。

■別の道を選ぶ人たちが出てくるのは自然なことだと思う

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 総務省を退官し、星野さんと同じく外資系コンサルに転じたくろーどさん(仮名)も、「やはり長時間労働が体力的にしんどかった。私の場合、法律改正に関わる事が多かったが、仕事量が多い業務なので、例えば1日5時間の残業でも20営業日続けば、月100時間だ。これが1年も続けば、それは病みますよね、という感じだ」と振り返る。

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 「妻にも我慢を強いてきたと思う。毎日1時、2時に帰ってくると、妻からは“そんな働き方をして大丈夫なの?”と心配される。よく“公務員は安定している”と言われるし、“辞めるとなると家族から引き止められたのでは?”と思われるが、むしろ“辞めた方がいいのではないか”という感じだった。

 そうでなくても、総合職の国家公務員の場合は事務次官レースもあり、最後まで組織に残れる人はごく一部。長く働くという点では不安が残る。スキルに繋がるような選択をしていかないと、という気持ちが強くなってきた。もちろん、法律を作ることも含め、国の大きな仕組みを作るという仕事は国家公務員にしかできない。やりがいはとても大きかった。

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 ただ、かつてであれば、それこそ小説『官僚たちの夏』のように、“国を変えていくんだ”、“新しい仕組みを作るんだ”という熱意を実現できたかもしれないが、霞が関も政治も変わった。特に“官邸主導”と呼ばれる状況になれば、大きな方針は全て官邸から降ってくるし、“やらされ仕事”を我慢してこなすことが多かった。それではやりがいが感じられないからと、別の道を選ぶ若い人たちが出てくるのは自然なことだと思う」。

■給与だけでは解決しない。問題は他にもたくさんある

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 人事院は8日、国会と内閣に対し、国家公務員の一般職の月給・ボーナスともに引き上げる勧告を行った。特に若手職員を中心に引き上げを求めており、総合職などでは初任給3000円が増額される。これは29年ぶりの水準だ。さらに志望者の減少を受け、総合職採用の受験年齢を現行の20歳から19歳に引き下げる勧告も行っている。

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 星野さんは「もちろん、どれもやるべきだろう。ただ、"全然足りない"というのが今も働く人たちの総意だと思う。長時間労働をどうするか、人員数をどうするのか、業務の効率性をどうするのか。問題は他にもたくさんある。そして最終的に大方針を変えるには政治の力がなければできないし、それを後押しするのが政治家を選ぶ国民だ。政治家にはよくよく問題を理解していただきたいし、河野大臣たちが改革を進めやすくするためにも、国民が良い意味でプレッシャーをかけるべきだ」と指摘。

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 くろーどさんも「待遇を改善すれば働こうと考える人も増えるのだろうが、民間の給料が上がっているから国家公務員も上げるという仕組みになっているだけで、仮に民間が上がっていないのに国家公務員だけを上げれば、国民に怒られるだろう」と苦笑。

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 その上で、「新卒採用に関しては給与はもちろん、実態を改善しイメージアップを図ること。そして中途採用も、民間企業にいた人たちが経験を活かせるようポストを用意することだろう。特に中途に関しては、どんどんやめているから仕方なく採用しているような部分がある。どんな公務があって、それにどんな人材が必要だから新卒はこれだけ、中途はこれだけ、任期付きはこれだけ、という戦略をもった仕組みにしていく必要がある。公務員制度改革担当になられた河野大臣はデジタルが本務なので、そちらの活用も含めて検討に期待している」と訴えた。

■国の仕事に携わると損をする、という社会になっている気がしてならない

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 2人の話を聞いたEXITのりんたろー。は「“ご褒美”が少なすぎるな、と思ってしまった。“旨み"が無い中、国を変えたいと思う人たちが“やりがい搾取”されている」。

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 兼近大樹は「国に関わるものは何でもかんでも敵対視するような感じがあると思っていて、国の仕事に携わると損をする、という社会になっている気がしてならない。優秀で、しかも世のため人のために働きますという人たちが辞めていってるって、相当危ないぞと思う。上の人のヒアリングに現場の若い人たちがどこまで本音を言えるかわからないし、こうして辞めた人たちに聞いて直していかないと」とコメント。

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 プロデューサー・慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「やっぱり日本社会にリスペクトが足りなかったと思う。これは“嫁なんだから、そんなの当たり前でしょ”みたいな、女性が置かれてきた立場にも似ていると思う。官僚に対しても、“何言ってんの?国から金もらっているし、裏方なんだから”みたいな感覚で、社会を“忍耐”で支えるよう求めすぎたのだと思う」。

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 クラウドワークス取締役の成田修造氏は「昔は東大=官僚ですね、というぐらい、憧れのレールだったのだろうが、初任給を5万円、10万円と上げる大手IT企業も出てくる中、上げ幅が3000円というのは意味がないレベルだ。過酷な労働環境も許される時代ではない。むしろそんなに大変なら、3年限定で優秀な人たちが官僚になり、どんどんリフレッシュしていくような、サッカー選手的なプロフェッショナルの世界にしてもいいかもしれない」と問題提起していた。(『ABEMA Prime』より)

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