将棋の囲碁将棋チャンネル 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局が1月8・9日の両日、静岡県掛川市の「掛川城二の丸茶室」で行われ、藤井聡太王将(竜王、王位、叡王、棋聖、20)が挑戦者の羽生善治九段に91手で勝利し、勝利しシリーズ先勝を飾った。初防衛を目指す藤井王将がリードを広げるか、100期目のタイトル獲得を狙う羽生九段が追いつくか。注目の第2局は1月21、22日に大阪府高槻市の「摂津峡花の里温泉 山水館」で予定されている。
令和の絶対王者と平成のレジェンドがタイトル戦で初激突する、ファン待望の“世紀の一戦”。遠江国・掛川城下で行われた開幕局はタイトル保持者の藤井王将に軍配が上がった。注目の戦型は、後手番の羽生九段が「一手損角換わり」を志向。過去のタイトル戦でもポイント的に使われており、本局でも秘策が採用された。羽生九段は「作戦の一つとしてまだ可能性があるのかなと思って、やってみることにしました」。藤井王将は「本局に向けて想定していた訳ではないですが、近い形を考えたことがあったので、それを思い出しながら進めていました」と後手の真意を探るべく読みを深め、冷静に受けに回った。
難解な中盤戦では、互いにたっぷりと持ち時間を投入。2日目に突入すると、羽生九段の積極性に呼応するように藤井王将が銀捨てから強気な踏み込みを見せた。その後も藤井王将は正確な攻め込みで後手陣を圧倒。劣勢に追いやられた羽生九段も、技を駆使して反撃への道筋を探ったが、追い上げには至らなかった。最後は藤井王将が角打ちから押し切り、冷静かつ堅陣を活かした王者の指し回しで1勝目を手にした。
初防衛へ好発進を遂げた藤井王将だが、「長考した場面であまり考えても見通しが立たないことが多かったので、判断力を挙げなくてはいけないのかなと感じました」と緩む様子はない。「本局を振り返って、次局以降より内容を良くしていけるように頑張りたいと思います」と意気込みを語った。
一方、黒星発進となった羽生九段は「何が悪かったか、調べてみないとわからないです。細かい変化のところをもう少し掘り下げて考える必要があるということを感じました」と振り返った。羽生九段にとっては約2年ぶりのタイトル戦。「(持ち時間)8時間は長いようで短いので、時間の使い方も課題になるかなと思いました」と感触も語っていた。
過去11度のタイトル戦のすべてで奪取と防衛に成功している藤井王将が、王将位初防衛に向けて好発進を遂げた。しかし、挑戦者はタイトル獲得数99期の百戦錬磨の羽生九段とあり、決して平たんな道のりではない。羽生九段の先手番で1月21、22日に行われる第2局までの間には、藤井王将は朝日杯本戦、順位戦A級、羽生九段も順位戦B級1組の対局が予定されており、体調管理、スケジュール調整も戦いのゆくえを左右するポイントになりそうだ。
(写真提供:日本将棋連盟)