■岡氏の主張「高齢者支援は『基礎控除』『年金』の2つで十分」
敬老パス制度による札幌市の支出は、2023年度で63億円。岡氏は「札幌市としても、賛成派と反対派のどちらにも配慮したとアピールするためには、あの場で若い世代が“削減してほしい”と意見する必要があると思った。また、参加されている高齢者の方に“今の若い人たちは本当に苦しいんだ”と、面と向かって言う機会も必要だと思って参加した」と説明。
岡氏は高齢者支援について、「『基礎控除』『年金』の2つで十分。これ以上の支援は不要」「医療費は現役世代を含め負担割合を増やすべき」と考えている。「その人が“利用した”とわかるものについては、民間サービスでやるべきだと思っている。例えば、道路や除雪などは“あなたはこれぐらい使ったからこれだけ請求ね”とできないので、みんなで負担しようというのはわかる。しかし、バスや電車はいつ使ったかが完全にわかるものなので、個人に負担させればいいのではないか。また、その人が一番使いたいように使える意味でも、支援するなら年金に一本化してほしい」と主張した。
これに北海道地方自治研究所理事・同志社大学教授の吉田徹氏は「自治体のお金の使い方に関して、納税者が意見を言うのは正当なこと。岡さんのように若い方も参加して発言したのは非常に良いことだと思う」とした上で、「東京を除けば、どの自治体も財政状況は非常に厳しい。他方、高齢者の貧困率は2割を超え、生活保護受給者の割合も半分以上を占める。なんらかの支援は必要だが、お金もないし、増税もできない。まさに敬老パスも同じで、限られたパイを世代間で奪い合う嘆かわしい状況が生まれてしまっている」と述べる。
また、年金一本化という提案に対しては、「日本は現金給付の割合が他の国よりも高いので、もう少しサービス給付してもいいと思う。敬老パスはサービス給付の意味合いが強いが、やはり北海道独自の事情も加味しないといけない」と指摘。札幌市の高齢化率は、2015年の24.9%から、2040年には36.2%に上昇する予測だ。「一人当たりの面積が非常に大きい地域で、地域交通も貧弱だと、廃線や減便となる。ただ、移動する自由があり、その権利を自治体としてどう確保していくのかは重要な問題だ」と投げかけた。
一方、アクティビスト、個人投資家の田端信太郎氏は「敬老パスは資産や所得がある高齢者でももらえる一方で、困っている若者はもらうことができない。“敬老”と福祉は混ぜないほうがいい。“高齢者だから敬おう”というふわっとした話にお金を使う余裕はないと思う」と独自の見解を示す。
これに吉田氏は「生活保障と働くことが一体になっているのが、日本の社会保障体系の1つの特徴。年金をもらう年齢になると、それまで自分で購入していたサービスを公的負担で補ってあげようという考え方がある。敬老精神というよりも、おそらくこうした体系からきている」とした。
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