【写真・画像】「人間ではなくなる」80代の戦場ジャーナリストが見た“戦争の極限状態” ベトナム戦争を若者に語り継ぐ 13枚目
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石川文洋さん

 世界中の戦場を取材した文洋さんの眼差しまなざしは、いつも傷ついた人々に向けられていた。「戦争になると民間人が犠牲になる。戦争は政治家が起こして、民間人が犠牲になる。まさしくベトナムもパレスチナもそうですよね」。

 枯れ葉剤は、戦場にいた人たちだけではなく、その子どもからひ孫まで、4世代にわたって暗い影を落としている。

「その手はとても小さくて、震えていて、涙が出てしまいました。私が何不自由なく生まれて、学校に行って、友だちとボールで遊んで、好きなことをしていることが、どれだけ幸せなのか、改めて感じることができました」(ツアーに参加した花城青葉さん)

 ベトナムツアーを通して、戦争や平和について考えた学生たち。「実際に自分の目で見て、実際に会って話す、言葉は違うけれど、お互いに感じるものがすごくあったし。写真とは違った思いにも気づくことができたと思っています」(ツアーに参加した宮城希望さん)

 日本に戻ると、文洋さんは休む間もなく次の現場に立っていた。沖縄本島中部、うるま市の陸上自衛隊勝連分屯地。政府はこの場所に、ミサイル部隊を配備した。私たちが生まれる前、沖縄の青年たちが体を張って止めようとした戦争。その思いを継ついでいけるのだろうか。文洋さんは各地で同じ言葉を繰り返し語った。

「平和というのは、みなさんが学校に来たり、普通の生活ができることが平和だと思っている。戦争になると普通の生活ができません。平和ではない。だからみなさんが毎日来られている、友だちと遊んでいる。これは平和だから、両親や周りの人にみんなに感謝を感じないといけません」(文洋さん)

 いくつになってもその眼差しまなざしは変わらない。文洋さんは写真とその言葉で、今を生きる人たちに語りかけている──。

(琉球朝日放送制作 テレメンタリー『戦場ジャーナリストのエンディングノート』より)

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