■冤罪に苦しむ人々のために
袴田ひで子さん
巖さんと拘置所で一緒だった石川一雄さん。いわゆる「狭山事件」で無期懲役が確定したが、冤罪を訴え、裁判のやり直しを求めていた。「我が無実、叫び続けて60年。冤罪が晴れるまでは元気で闘っていきます」。
(※石川さんは、2025年3月11日に埼玉県狭山市の病院で亡くなった。享年86)
ひで子さんはこうした人たちの支援のため、全国各地へ足を運ぶ。「今度こそは石川さんです。石川さんの再審開始です」。
そして、袴田家には2匹の猫がやってきた。新たな家族は、巖さんに変化をもたらしたという。「猫をかわいがるからね、言葉が多くなった。今までほとんど話なんてしないけど、『猫が腹すかしているで、ごはんくれてやってくれ』とかね」(ひで子さん)
たとえ巖さんが無罪になっても、それで終わりではないとひで子さんは言う。「巖はもちろん助けにゃいかんが、大なり小なり冤罪に苦しむ人っていうのは、悩んで悩んで、つらい思いしているの。その人たちのことを思うと、それこそ再審法(改正)を早くやってもらって。生かさなきゃ。巌が48年入っていたということを生かしてもらわなきゃ困る」。
「検察官の誤った主張に盲従できぬように、明らかなデッチ上げを全国民が知り得るところまで、訴え尽くせる態勢を確立することです。冤罪が早期に雪がれることが少ないのは、矛盾点が存在しているのに、それに目をつぶることに慣れている権力的な体質が、常に生きているからでありましょう。この弱さがどのような努力を尽くして克服したらよいのか、司法の正義のためにも決定的に要求されている課題です」(獄中からの手紙1976年12月1日)
2024年10月9日、再審で無罪が言い渡された判決について、検察は控訴の権利を放棄する手続きを取り、巌さんの無罪が確定した。だが、失われた時間は戻らない。
※地上波初放送 2024年9月28日
(静岡朝日テレビ制作 テレメンタリー『でっち上げ ~袴田事件 58年の叫び~』より)
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