真夏に、連日10時間以上の取り調べが続き、やがて巖さんは自白する。「沼津で買ったくり小刀で4人を刺した」「パジャマを着て犯行に及んだ」という供述だった。
かつて刃物店を営んでいた高橋国明さん。巖さんが「くり小刀」を買ったと供述した沼津の店の店主だ。支援者集会で、高橋さんは驚くべき証言をした。
「うちで扱っていたくり小刀というのは刃渡りが135mmのものなんです。現場で落ちていたくり小刀の刃渡りは120mmなんですね。これはうちは置いていないんです。ですからそれが凶器というのは極めて不自然なんですね」
凶器とされたくり小刀は、高橋さんの店では売っていなかった。巖さんはなぜ嘘の供述をしたのか。
「死刑囚にデッチ上げられてから間もなく13年目。警察内の密室で極めて悪辣な拷問を連日うけた。私はほとんど自己を喪失させられていた」(獄中からの手紙1980年5月13日)
巖さんと事件をつなぐ5点の衣類
