■「飲み水に虫やゴミ」牧場で長年続いた“障害者虐待”
遠藤牧場で働いていた佐藤さん(仮名・60代)
中度の知的障害がある佐藤さん(仮名・60代)。障害者向けの就労支援施設で、週に5日、野菜の袋詰め作業をしている。この日は、2時間ほどの作業で工賃は250円だった。現在は、グループホームの支援を受けながらアパートで1人暮らしをしている。
中学卒業後すぐに、北海道内の牧場に住み込みで働き始め、およそ20年前、別の牧場へ移った。待っていたのは、劣悪な労働環境だった。
北海道恵庭市にある遠藤牧場。2022年まで、佐藤さんを含む知的障害のある3人が住み込みで働いていた。休みなく働いたが、給料はもらえなかった。最も長い人で約45年続いた生活。食事は簡素なもので、腹を空かせて、木の実を拾って食べる人もいたという。
2階建てのプレハブに2人が住み、1人が住む隣の平屋にだけ、汲み取り式のトイレがあった。
佐藤さんは「(遠藤牧場を)出られた時はうれしいかなと思って。もういいです、あそこは…」と振り返る。プレハブでは寒い日でもストーブを使えなかったそうで「『燃料も高くなったからもうだめだ』と言われて」と明かした。散髪の際には、牛用のバリカンを使っていたそうで「おやじさん(牧場主)に切られた。この辺(耳の裏)か……」と話した。
牧場主の遠藤氏を知る人々の証言
