将棋の藤井聡太王座(竜王、名人、王位、棋王、王将、棋聖、23)が9月4日、シンガポール・セントーサ島で行われた第73期王座戦五番勝負第1局で挑戦者の伊藤匠叡王(22)に勝利。3連覇に向けて好発進を遂げた。本局では、終盤戦で藤井王座が見せた「サーカスのような手順」が話題に。対局を見守ったファンはもちろん、解説棋士をも驚かせていた。
若きタイトルホルダー同士が顔を合わせることのなった注目のシリーズ開幕局。本局はシンガポール建国60周年の文化交流事業の一環として開催され、同国の南方に位置するセントーサ島のリゾートホテル「アマラ・サンクチュアリ・セントーサ」を舞台に争われた。
開幕局は後手番となった藤井王座が「雁木」を採用。並行して行われている防衛戦の王位戦七番勝負第3局でも永瀬拓矢九段(32)を相手に白星を飾っており、藤井王座が研究を深めている戦型と見られている。
対局は藤井王座が主導権を握って指し進められたが、劣勢を強いられることになった伊藤叡王もうまくプレッシャーをかけ続けて対応。ABEMAの中継に出演した屋敷伸之九段(53)は「最後は際どい戦いになったと思うが、藤井王座の終盤の見切りから勝負の決め方が見事だったと思う」と印象を語っていた。
わずか66手の短手数での決着となったが、「中身の濃い好局だった」とも評価。中でも、ともに解説を務めた村中秀史七段(44)が舌を巻いたのは、伊藤叡王の渾身の勝負手に対して藤井王座が見せた圧巻の構想だった。
「歩と温存していた持ち駒の銀の一発で仕留めるという…」




