原爆投下から10年後の1955年に開館した原爆資料館は、被爆直後を想像してもらおうと、かつては「被爆者の姿を再現した人形」を置いていた。その方針が変わったのは2019年だ。人形は撤去され、被爆死した人の「遺品」や被爆者が描いた「絵」など、“実物”を重視する現在の展示となった。

 館内では、被爆証言も行われる。8歳で被爆した八幡照子さん(88)は「裏庭に降り立った時です。ピカッと空一面が光った。ものすごく青白い光。今表現すると空一面が巨大な蛍光灯になったようだった」と振り返る。

 記憶が鮮明で、自ら語れる被爆者が年々、減る中、遺品が悲劇を語り続けているのだ。そんな“実物重視”の資料館で、遺品の「レプリカ」が作られていた。だが、館内で展示されることはなく、存在はほとんど知られていない。

30年間「レプリカ」を作り続ける職人
この記事の写真をみる(9枚)