■「真っ暗な中を明るく照らしていくような潜水活動を」

【写真・画像】「海底に眠る183人の遺骨」長生炭鉱水没事故から83年…「今私たちがしていることは、本来国がやるべきこと」潜水調査続ける市民団体の想い 5枚目
拡大する

「刻む会」共同代表 井上洋子さん(75)

 2025年4月、潜水調査に2人の韓国人ダイバーが参加。韓国人遺族も見守りに駆け付けた。坑道内の調査は今回が3回目。これまでの調査で、当初の予想以上に遺骨にたどりつくのが困難なことが分かってきた。

「代わりにお父さんの心を持って、私にとっての祖父にその気持ちを届けたくて来た」(チョン・ソッコさんの息子、ヨンボクさん)

「今は見えるようで見えない、出てきそうで出てこない。その不安な気持ちが一番つらい」(韓国遺族会 会長 ヤン・ヒョンさん)

 坑道内の調査は3日間行われた。当初の目的であった「遺骨の収集」から坑道の状態を調べることに重点が置かれた。

 ダイバーの伊左治さんは「完全に木が折り重なったみたいにガシャっとなっているので、そこの木の隙間を抜けて。だからこんな(狭い)ところを抜けていかないといけない」と語る。そして「(木を)どけると多分坑道ごと崩れる。崩れたものによって支えられている感じなので」とその難しさを明かした。

 調査の結果、坑口から200メートル付近が大きく崩れていて、遺骨があるとみられるエリアに進むのは厳しいことが分かってきた。

「中の犠牲者も辛抱強く私たちを待っていてくださると思うので、私たちも辛抱強く、真っ暗な中を明るく照らしていくような潜水活動を今後も続けていきたい」(井上さん)

 遺族たちは事故があった現場に向かい、船上から献花した。

「おじいさん、来ましたよ、お元気でしたか?」(ヨンボクさん)
「胸が苦しいです」(ヤンさん)
「海の中でどれほど苦しかっただろうかと思います」(ヨンボクさん)

「当然坑口が開いた時点で、ご遺骨に近づけると思っていたので、私たちは失望と言いますか、そういうものをご遺族にも与えたし、残念な気持ちもあるけれど。今私たちがしていることは、本来国がやるべきことであって、日本の国にやっていただくために、できるところから進めていっているわけで、こういう私たちの動きが国に届いていくように願っています」(井上さん)

2025年8月25日、骨のようなものを発見
この記事の写真をみる(6枚)