■「祖父のテーマ」が「自分のテーマ」に

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「祖父の沈黙」(作:千田豊実さん)

 およそ1年をかけた座談会や取材を終え、2025年6月、演劇の稽古が始まった。千田さんはこの公演で舞台美術を担当する。

 そして、10年ぶりの祖父との2人展に向けた新作も大詰めを迎えていた。シベリア抑留と改めて向き合った1年を経て、「祖父のテーマ」が「自分のテーマ」になってきた。

 千田さんは「普段やっている抽象絵画は、見えない感情とか時間の流れをキャンバスに表現しているけれど、そっちに抑留のこととか抑留生活での若き祖父の心情をぶつけられないかと思って」と創作の意図を語る。

「祖父が伝えてくれたことをもとに今までは描いていたけれど、それにプラスして自分で考えてどうしたらもっと伝わるか、もっと関心をもってもらえるか。次の世代につなげる自分、今の40代の役割かなと思う」(千田さん)

 完成した新作のタイトルは「祖父の沈黙」。抑留で受けた心の傷や記憶が有刺鉄線のように、祖父の心に絡まっている様子を抽象絵画で表現した。

「舞鶴の引揚桟橋で『申し訳なかった』という一言があって。生きていること自体に申し訳なさを感じながら過ごしている。有刺鉄線のトゲとともに生きているような、痛みを伴って生きているような感じがしていて」(千田さん)

「もう絶対に戦争にしてはいけん」
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