■「ろう者の役」を演じる葛藤
上京して日課ができた。家族とのテレビ電話だ。さくらさんは「記憶にないぐらい日常のことを(話す)。自分の仕事の報告を母は聞いてくれるので、応援してくれているなと感じますし」と語る。
上京後は、イベントやトークショーに出演している。さらに、手話を広めたいと考え、SNSで発信している。「季節の手話を。『春』下から暖かい空気が入ってくる(イメージ)」(さくらさん、以下同)
歌詞を手話で表現しながら踊る、手話ダンス。2024年9月、兵庫県で開かれた全国大会で審査員の仕事を任された。生まれつき耳が聞こえない人や手話通訳士に混じって「ダンスの中で手話が正確に使われていたか」などを評価した。
「何がしたくて上京したのかというと、お芝居がしたい、今までしていた歌とダンスがしたい。手話に関連した仕事をするというのは正直想像していなかったです」
しかし、その手話を生かした仕事で思わぬ壁にぶつかっていた。2024年4月、さくらさんに舞い込んだ、念願だった舞台の仕事。耳が聞こえない「ろう者の役」を演じた。しかし、「自分はそこに出演する人としてふさわしくないんじゃないか。そう言われているんですけど……」と話す。
SNSに寄せられたのは、CODAのさくらさんがろう者の役を演じたことに対する批判コメント。実はこの作品、原作者側から「ろう者の役は本物のろう者が演じる事」という条件が付けられていた。しかし、最適な役者が見つからず、耳が聞こえない家族のもとで育ったなどの理由からさくらさんに声がかかり、原作者側の許可を得た上で公演が行われたそうだ。
さくらさんは「自分の立場を考える時間が増えて。私は身近に(ろう者がいる)環境で演じていたので、もうなんかよくわからない状態……。作品が終わったとしても私の世界はまだまだ続くので、ろう者の世界にも入るし。正直言ったら、他の人にはわかってもらえないだろうなと思います」と吐露する。
CODAの人たちが抱える共通の悩み
