■CODAの人たちが抱える共通の悩み
この日、さくらさんの呼びかけで集まったのは、両親の耳が聞こえない中村美裕さんと、弟の耳が聞こえない酒井冴輝さん。中村さんは「小さいころは通訳するのが面倒くさくて、聞こえる親ならこんなことしなくていいのにと思うことはありました」と話す。さくらさんも「あるあるですよね。大人の言葉をどう手話に訳すか」と共感し、中村さんは「わからないんだよね。大人の言葉の意味が」と続ける。
中村さんは「(男性の)友達がCODAで、その彼女が聞こえる人。彼女の親から『もし子どもがろうだったら嫌だから別れてほしい』と言われて別れた」と話すと、さくらさんは「初めて聞いた。それで別れなさいっていう親なんだったらこっちから願い下げだわっていう感じ。そういう考え方の人とは付き合えませんってなっちゃうよ逆に」と憤った。
「ろうの世界」とも生きてきた3人には「共通の悩み」がある。酒井さんは「聞こえない人が“当事者”というのが大きくて、俺らは聞こえるから“当事者”からしたら『私たちの気持ちなんて知らないでしょ』と思う人もいるだろうし」と語る。
さくらさんも同じ気持ちを抱えている。「それは思うかもしれない。発言するときに最近気を遣う。あくまでも“当事者”じゃないから突っ込んだことを言うと『“当事者”じゃないのに』と思われたり言われたりしてしまうだろうなとか。家族と一緒に生きてきたから見たものを言っているときに『聞こえる人が勝手に代弁しているんじゃないか』ととらえられてしまう。どうしたらいいのかなって」。「聞こえる世界」と「ろうの世界」の境界で揺れている。
国内におよそ2万2000人いるとされるCODA。どのような対策が必要なのか。東京大学で研究をしている中津真美特任助教に話を聞いた。自身も聞こえない親をもつCODAだ。
中津特任助教は「課題は『社会がろう者・難聴者もいるという前提につくられていない』ということ。だからCODAが通訳しなければならない状況が発生してしまう。『負担だったな』『がんばりすぎてきたな』と語るCODAは多い。情報保障(情報提供)の制度がもっと柔軟に使えるようになればいい。病院専属の手話通訳士がいればとも思う」と指摘する。
中津さんは悩みをもつCODAたちが経験や思いを共有しあえる会を主催しており、さくらさんも前回参加した。
すると急遽、ディレクターから「中津さんへのインタビュー取材がある」と聞いたさくらさんがこの場を訪れた。
「どう立っていたらいいかわからない状態。迷いながら生きていくんだなとは思うんですけど」と相談するさくらさんに、中津特任助教は「家の中ではマイノリティ。一歩外に出たら聞こえるマジョリティになってしまう。このギャップの苦しさってなかなか他の人には理解できないものだと思う。私との関係が必要であれば声をかけてもらえればいいし。同世代のCODAが必要であれば仲間に声をかけてもらえればいいし。揺れるよね」と寄り添う。
デフリンピックで“音”を届ける
