■進まない「再生利用」と2つの基準
2025年8月、除染で出た土などの福島県外での最終処分や再生利用について理解を深めてもらうための見学会が実施された。これまでに約5万人が中間貯蔵施設の見学に訪れていて、この日は県内のほか、関東や関西などから20人ほどが参加した。
「古墳みたいな形をした山が土壌貯蔵施設。除染で出た土が積まれた山」「土を全て県外に運んでいかなければいけない。あまりにも量が多すぎるということで、再利用できる低線量な土、例えば道路や田んぼ・畑・農業資材で使えないか検討を進めている」(担当者の説明、以下同)
一時保管されている土壌のうち、4分の3は1キロ当たり8000ベクレル以下で、政府はその土を再生利用することで最終処分する量を減らす計画だ。
「(年間で)1ミリシーベルトを被ばくしない値として、1キロ当たり8000ベクレルを下回る土」
環境省によると、1キロ当たり8000ベクレル以下の土であれば、再生利用のために現場で作業する人の1年間の追加被ばく線量が、国際的な基準である1ミリシーベルトを超えない。
東京からの参加者(20代)は「来ないと分からなかったことや実際に来たから分かること、感じたことがあるので来たことに意味はあると思う」と話した。
東京から参加した人の中には原発事故が起きたあと、ボランティアとしてたびたび福島県を訪れていた人もいた。除染で出た土がどのように保管されているのか、少しでも知りたいと思い、中間貯蔵施設を訪れた。
「安全だから安心できるかなと言われると、必ずしも安心できるというわけじゃないと思った」(東京からの参加者 20代)
「新宿御苑・所沢・つくばの環境省の土地に持っていく計画があったが、中止になっている」(担当者の説明)
2022年12月、新宿では、「放射能汚染土 持ち込みヤメテー」と書かれたプラカードを持った人々がデモに参加していた。「いまだに終息もままならない、そんな福島にあるものをですね、税金で集めさらには税金でこっちに持ってくるというのはどうなんですか」。
環境省が管轄する新宿御苑では、敷地の中にある関係者しか立ち入れない場所で再生利用の実証事業を行う計画だった。東京・新宿区に住む平井玄さんは「国際的な観光地だから、ここに持ってくれば『安全ですよ』って宣伝になるという意図が見えちゃって。それはおかしいと思う」と指摘する。
環境省が開いた説明会は、呼び掛けが足りなかったのか、ごくわずかな人しか参加していなかった。反対する住民の中には、再び説明会を開くよう求めた人もいたが、その後、計画自体が頓挫している。
平井さんは「福島に(除染土壌を)ずっと置いておくのは不当だと思う。何とかしたいし、受け入れをやりたいけど、そこをきちんと説明してくれない。(新宿御苑で実証事業を)やらないとは絶対に言わない。しかし、やるとも言わない。非常にあいまいなまま2年が過ぎた」と語る。
また、埼玉県所沢市にある環境省の施設でも、花壇に除染で出た土を再生利用する計画だったが、頓挫している。
反対する住民団体は今も定期的に集会を開いている。埼玉・所沢市の住民団体の集会では、「ダブルスタンダードの問題がどうしても引っかかってきて」という声が上がった。指摘しているのは、放射能濃度に関する2つの基準だ。集会では、「100ベクレル以下の基準を原則にすべき」という意見が出た。
環境省によると、「廃棄物を安全に再利用できる基準」が、1キロ当たり100ベクレルで、「廃棄物を安全に処理するための基準」が、1キロ当たり8000ベクレルとされている。
集会後のインタビューでは、「突然8000ベクレル以下だったら安全と言ってきている。もともとの1キロ当たり100ベクレルを守ってやるようにしないと、人為的な放射性物質がどこでどう拡散していくか分からない」「安全に管理することは、環境省自身が言っているわけだから原則通りやって欲しい」と語られた。
環境省の中野哲哉参事官は、「どこに持って行っても自由に流通できるような条件。1キロ当たり100ベクレル以下なら流通は自由。再生利用は1キロ当たり8000ベクレル以下を扱う。環境省が責任を持って管理をするため、前提条件が大きく違っている」と説明する。
総理官邸での再生利用と地権者との溝
