■「漫画学校」開校への思いと迫る時間
島にマンガの壁画が増え、訪れる人が多くなってきた今、おさむさんが掲げる10年越しの計画がある。それは、廃校となった学校の校舎を活用した「漫画学校」の開校だ。
「マンガをみんなが喜んで見に来てくれている。マンガが好きな子が多く来る。マンガの勉強がしたいと子どもに聞いたので、マンガの勉強を島でどうかなと」(おさむさん)
漫画学校は、島の壁画に原画を提供したプロの漫画家を講師に招き、生徒は全国から募集。1泊2日で滞在し、計6回の授業を行う。
おさむさんは漫画学校の開校を急いでいた。「最初は木村が自治会長をやっている時に喜んでくれればと、島のためにという意識がなかったから。ただ、木村が『困った、困った』ばかりだったから。今は彼もあまり体調が良くないし、元気なうちに開校したい」。
「これはガンの薬、朝8錠くらい飲む」と話すさだむさん。3年前に肺ガンを発症。現在も治療を続けている。「なんとか協力してあげたい、手伝ってあげたい気持ちばかり焦って、体が何も言うこと聞かないから。本当に申し訳ないなだけで…」。
漫画学校開校式の5日前、おさむさんは準備に追われていた。その現場にいたのは、馬場政典さん(50)。2人の島おこしに共感し、去年、愛知から移住した。開校する漫画学校のスタッフとして働いている。
「いいじゃないですか、それっぽくなってきた」と準備を進めるおさむさん。「(さだむを)好きとか嫌いじゃ割り切れないものがあるかな。さだむの夢は俺の夢だね。まさしく今そう思う。あいつがそういう夢を持っているから俺もそれに同調したし」。
漫画学校の生徒を増やすため、島を紹介するPR動画制作を外部の業者に依頼。SNSで高井神島の取り組みを発信し、インスタのフォロワー数は3カ月で1万5000人を超えた。「島のにぎわいを取り戻すこと」2人の夢への期待が高まる。
開校準備が進む中、おさむさんがさだむさんを漫画学校へと連れ出した。島の坂は傾斜がキツイため、2人には電動カートが欠かせない。さだむさんは教室に入ると「まさかこんなになるとはね。もうすぐだね」と笑みを浮かべた。
さだむさんは、昔の思い出を語り始めた。「ここ(教壇の横)に立たされたな…悪いことばかりしていたから」「逃げ足は速かったから(笑)」。すると、おさむさんは「まさかまた漫画学校でよみがえるなんて、想像もしていなかったなあ」と感慨深げに反応した。
開校の日、そして世界へ
