■「東京都の決定で“使い捨て”」問われる自治体の責任
去年秋、不正アクセス事案により指名停止処分を受け、都から全ての事業を受託できなくなったパソナ。別の事業でパソナの契約社員として働いていたAさんは3月末で突然雇止めとなった。東京都が委託した公的な事業であるにも関わらず、それ自体が不安定な雇用を生み出しているのではないかと、Aさんは疑問を感じている。
「一言で言えば『とんだとばっちりを受けた』。尊い能力もみんな奪われてしまったと思っている」(雇止めにあったAさん、以下同)
「構造的にゆがんでいるのではないか。委託で民間のノウハウを使うといえば言葉はいいが、その機関で働いている人たちはほとんどが非正規雇用。公共の職業の需給の調整機関で利用者と向き合っている人たちが、東京都の決定によって『使い捨て』というか、いとも簡単に仕事場を失うのは非常に憤りを感じる」
東京都の事業の最前線で働く人たちに起きた雇止め。しかし、都と直接の雇用関係にはなく、東京都は影響を受けた人数はわからないとしている。
こうした中、自治体の責任はどこまであるのだろうか。自治体の事業における雇用問題に詳しい上林氏は次のように指摘する。
「パソナを指名停止にする判断は入札制度上あり得ることだが、指名停止によりどのような影響が出るのかまで考えるのが自治体の責任ではないか。『ビジネスと人権』といって、契約打ち切りになる事例等が発生するということは、わかった時点で調査に入らなければいけない。調査をした結果『これはまずい』と思ったら何らかの手立てを講じるのは発注元の責任になると思う」
上林氏によると、日本ではまだ委託元の責任を法的に直接問う仕組みはないものの、自治体によっては条例や独自の指針を定め、委託先で働く人たちの状況についても責任を持つ動きが出てきているという。
「東京都は人権に配慮した公共調達という仕組みをすでに作っている。それに照らしてみても、今回の事案は『知らぬ存ぜぬでいいのですか』と言いたい」(上林氏)
「公が搾取構造に加担している」財政スリム化の弊害
