■笑いと涙で伝える「ふるさと」初披露の日
そして迎えた、北方領土漫才、初披露の日。竹森さんが「緊張しております」と笑うと、阿部さんは「まずはウケるかどうか。漫才なので。そこが一つと。そこから僕らが発するメッセージが受け入れられるかどうか」と冷静に語る。そんな2人は本番直前までネタ合わせをする。
漫才のタイトルは「ふるさと」。2人が話を聞いた元島民の中村さんの姿もあった。
「それではお待たせいたしました。アップダウンの登場です」(司会)
「どうも~」(竹森さん)
「どうも~アップダウンです。よろしくお願いします」(阿部さん)
「はい。北方領土をテーマとした漫才やっていきましょうよ」(阿部さん)
「それではよろしくお願いします」(竹森さん)
「はい、いやお前もやるんだよ。2人でやるんだよ、漫才なんだから」(阿部さん)
「これ国後ね、国後」(体を使って島の位置を示す阿部さん)
「そうそうそう」(竹森さん)
「で、その横に択捉があります」(竹森さん)
「択捉がありますね、うん」(阿部さん)
「やれよ」(竹森さん)
「無理だよ、お前。全パ―ツ使ってるんだよ、無理だろお前」(阿部さん)
「足があるだろ、足が」(竹森さん)
「足!?」(阿部さん)
「足でやれよ」(竹森さん)
「足で?」(阿部さん)
「足だよ!」(竹森さん)
「じゃあもうここ、北東ですかね」(片足を上げる阿部さん)
「そうですよ」(竹森さん)
「この顔の」(阿部さん)
「もっと上げないと!」(竹森さん)
「もっとね?」(阿部さん)
「もっと上げないと」(竹森さん)
「もっとね?これね」(阿部さん)
「もっと、もっと上げないと」(竹森さん)
「無理に決まってるだろ。顔より上に足上がるわけねえだろ、そんなもんは!」(阿部さん)
「だったらお前、これ地図使いましょう」(竹森さん)
「地図あんのかい!」(阿部さん)
会場から笑いが起きる。
「歯舞群島、いろんな島が集まっているんですけど。一番近いのは貝殻島という所で、納沙布岬までなんと3.7キロ」(阿部さん)
「3.7キロですよ」(竹森さん)
「近いですよ」(阿部さん)
「めちゃくちゃ近くないですか。僕んちからイオンまで5キロですからね」(竹森さん)
「イオン?」(阿部さん)
「イオンよりも近いですから」(竹森さん)
「イオンの距離は人それぞれだろ」(阿部さん)
北方領土での、かつての暮らしぶりも伝える。
「お、何やらすごい屈強な方が来ましたけども。すいません」(阿部さん)
「おう」(竹森さん)
「あ、すごい荒々しい感じですね」(阿部さん)
「この村はな、捕鯨が盛んな場所なんだ」(竹森さん)
「捕鯨?クジラですね」(阿部さん)
「あっ、船が来たようですよ」(阿部さん)
「お、汽笛を聞き逃すな」(竹森さん)
「汽笛?どういうことですか?」(阿部さん)
「ああ、実はな汽笛は合図になっていて」(竹森さん)
「合図?」(阿部さん)
「捕れていたら3回、捕れなかった場合は1回しか鳴らないんだ」(竹森さん)
「なるほど、そういうことですか」(阿部さん)
「ボ~」(竹森さん)
「いま汽笛が鳴りました」(阿部さん)
「っとしている暇はないからな」(竹森さん)
「しゃべってたんかい、おい!」(阿部さん)
およそ50分の舞台。後半は朗読や演劇も交える。最後に演じたのは元島民が北海道本土へ引き揚げる船の中での出来事だ。
「握り飯、わかめ、野菜のみそ汁。本当においしかったことをいまでも忘れない。そして夜には船員のギター演奏による歓迎会が行われ、リンゴとカキをもらって食べ、感涙にむせんだ」(阿部さん)
「何か歌ってほしい曲はありますか」(竹森さん)
「ふるさと…ふるさと!」(阿部さん)
「うさぎ追いし かの山 こぶな釣りし かの川 夢は今も めぐりて 忘れがたき ふるさと」(竹森さん)
竹森さんの歌を聴きながら、涙ぐむ観客の姿も。
「日本のふるさとだった島。そして80年たったいま、ロシアの人々のふるさとでもあります。国同士の話し合いが厳しいいま、解決の道がなかなか見えない非常に難しい問題です」(阿部さん)
「今回ですね、取材を通じてどんどんどんどん人々が無関心になっていくこと、このことこそが一番苦しいんだということが分かりました。自分事として考えられるようになれば、それこそが問題解決の第一歩につながるんじゃないかなと、我々そう信じております」(竹森さん)
終了後、元島民の中村さんが2人に思いを伝える。「お世話になりました。本当にありがとうございました。見事でした。聞いていて、わが事と思って聞かせていただきました。そこにまさか歴史まで入れてもらえるとは思っていなかった。本当にお世話になりました。一言お礼を言いたくて」。
薄れゆく記憶をつなぐために
