■初公判で明らかになった信じがたい事実と遺族の思い
事故から1年。神農さん夫妻はようやく現場に足を運ぶ気持ちになった。現場で手を合わせる2人。彩乃さんは「煌ちゃんには今、現状を謝罪しかしていないので。『ごめんね』『大好きだよ』ということしか声をかけられていないので、そうじゃなくなる日がくればいいなとは思っているけど、闘っている最中は無理だと思う。全て思っていることが実現したときに、頑張ったよと言えるのかなと思っている。とにかく運転中に靴を履き替えるとかシートベルトを外すという『ながら運転は過失じゃない』と声に出していいと思う」と胸の内を明かす。
2025年11月、「本当のことを話してほしい」という思いを胸に初公判に臨んだ神農さん。罪状認否で竹崎被告は起訴内容を認めた上で、これまでと同じ主張を繰り返した。「事故の少し前からその日の夕方まで記憶がありません」。
しかし、関係者への取材で被告は当時ドレスコードのあるゴルフ場からラーメン屋に向かう途中だったことが分かった。さらに、裁判で検察官が被告の供述調書を読み上げ、信じがたい事実が明らかになった。
「上着を脱いだり、靴を履き替えたりするのは、ゴルフ場から出た後、車を運転しながらしています。タンクトップと革靴だと見た目のバランスが悪いので」(竹崎被告の供述調書)
被告は運転支援システムを作動させ、日常的に上着やさらにズボンまで着替えていたというのだ。彩乃さんは「すごく悶々として今日まで過ごしていましたけど。すごく被告が余裕そうで、何だったんだろうと思うと余計に怒りが湧きました」と憤る。
警察庁によると、「ながら運転」による死亡・重傷事故は、年々増加し、2025年は148件と過去10年で最多となった。一方で、どのような行為を「ながら運転」とするかが難しく、危険運転の罪に加えるには慎重な意見がある。
交通事故の法律に詳しい昭和医科大学の城祐一郎教授は、今回のケースについてこう指摘する。
「(今回は)進路前方を注視せず、自車の進路を適切に保持できない状態。重大な交通の危険を生じさせる恐れがある状態で自車を走行させていて、単に前を見ていなかった以上の危険性がある。構成要件に盛り込んで危険運転の1類型とすることは可能だと思う」
悪質な「ながら運転」は過失ではなく、飲酒や大幅なスピード超過と同じく「故意犯」と見なし、危険運転などより重い刑を適用すべきだと主張する。
「被害者の要請というか、やはり国民の声として『これも危険運転に入れるべきじゃないか』と改正が繰り返されてきた。国民の議論に乗せて、今後も法改正を続けるべきだろうと思います」(城教授)
「何人死んだら動くんだよ」法改正への執念
