■ずさんな調査と「ノーモアメガソーラー宣言」
大阪に本社を置く企業「日本エコロジー」。1000キロワットを超える大規模な太陽光発電施設・メガソーラーを全国各地に造ってきた実績を持ち、釧路市内で新たに17カ所の建設を計画している。
「できるだけ騒音のないような、規模の小さいやつ(重機)とか、そういうふうな創意工夫はしますね」(日本エコロジーの大井明雄営業部長、以下同)
「単なる我々の会社の営利だけで、利益だけでやろうとしていることではないですよ。もちろん営利がなければできません。しかし、もうひとつは社会的貢献、CO2を減らすということで、我々本州では全国700カ所、全てそこの地域の皆さんとともにやってきましたから」
地域住民とともに事業を行ってきたと胸を張る日本エコロジー。しかし釧路市では、自然環境に対する姿勢をめぐり不信感を生んでいた。
去年12月に行われた住民説明会では、参加者から建設予定地のひとつに国の天然記念物・オジロワシの巣がある可能性を指摘された。
「昭和地域、それから北園地域、両方に希少生物は存在しない。存在しないというか巣がない」(日本エコロジー)
「希少生物に全く影響がないと、どこでそういう結論を出したの?」(住民)
「全く100%影響がないという表現はしていません」(日本エコロジー)
「はっきり言ったでしょ、そうやって」(住民)
「営巣、すなわち巣を作っている…」(日本エコロジー)
日本エコロジーが説明会で配布した資料には、建設予定地が青い線の枠で示されていた。予定地のすぐ外側にオジロワシの巣がある。専門の業者が作成したという調査結果の資料でも、オジロワシの巣は建設予定地の外側にあるように見える。
しかし、釧路市に提出されている事業計画の内容から正確な位置を地図に落とし込んでみると、実際の建設予定地は南西方向におよそ40メートルずれていることが分かった。オジロワシの巣があるまさにその場所にメガソーラーが造られることになっていたのだ。
オジロワシの生態を脅かす開発に対策を講じてこなかった釧路市。市議会で市長が追及される事態になった。
「業者がもうすでに着工しようとしているときに、ガイドラインでいま対応しています、条例これからできます、だから何もできないんだ、市長として何も発言しないんだというのはおかしくないですか」(大越拓也釧路市議)
「市長しっかりしろ!」(市民からのヤジ)
「指名停止とかそういった状況もあるかもしれませんが、それを根拠に我々として声明を出していくとか、そういったことをすることは現在できない状態にございます。なかなか我々として実行力があることができないことは、悔しい。本当に悔しいです」(釧路市の鶴間秀典市長)
獣医師の齊藤さんは、10年以上前から建設予定地周辺でオジロワシのひなにGPSをつけ、生息状況の調査を行ってきた。
オジロワシのひなの活動範囲を示したデータがある。多くの点が巣から500メートル圏内に集中し、1キロ以上離れた場所でも活動していることが分かる。
「半径500メートル以内にソーラーパネルをつけてしまうと、ソーラーパネルの下にひなが潜り込んでしまう。上空から親がひなを発見できないので、餌を運ぶということができなくなる。最悪、ひなが餓死してしまう可能性がある」(齊藤さん)
釧路市からの通告を受け、日本エコロジーは巣がある場所での建設中止を決めたが、巣から500メートル圏内での建設は続行する方針を示した。
1980年に国内で初めてラムサール条約に登録され、国立公園にも指定された釧路湿原。雄大な自然と希少な生き物が息づくこの周辺でなぜメガソーラーの建設が相次いでいるのだろうか。
「日照時間が長いということと、平坦地が広がっているので開発費が抑えられる。道東というのは積雪がかなり少ないですから、年間を通して発電ができるということも電力会社としては大きな魅力なのだろう」(北海道教育大学釧路校の伊原禎雄教授)
さらに、釧路湿原の歴史をいまから50年ほどさかのぼると、建設が相次ぐもうひとつの理由が見えてきた。1970年代から80年代にかけて全国で被害が相次いだ「原野商法」。値上がりの見込みがない原野や山林を「将来値上がりする」などといったうたい文句で不当に買わせる手法だ。釧路湿原周辺もその舞台のひとつとなった。
「どうにかして土地を売ろう、売るほかないだろうなと思っていたんですけど、4000万円で買った土地なんですね。農業委員会に聞きに行ってご返答いただいたときには、もう200~300万(円)にしかならないと言われました」そう語るのは、釧路湿原の周りに5ヘクタールほどの原野を所有していた女性。父親の遺産として相続し、毎年支払ってきた固定資産税の総額はおよそ20万円に上っていた。
重荷となっていた土地を去年、買い取っていったのが太陽光発電事業者だ。買い取り価格は評価額の10倍だった。「私が期待していた以上の金額を提示していただいたので、本当にうれしかったです。正直、売却先なんて探せないですから」(同女性)
「自然環境と調和がなされない太陽光発電施設の設置を望まないことを、ここに宣言します」 釧路市は去年6月、全国で2例目となる「ノーモアメガソーラー宣言」を打ち出した。実効性はないものの、自然環境を脅かす開発に対する市の姿勢を示したものだ。
森林法違反と深まる住民との対立
