■霜被害と受粉への奮闘、自然との闘い
2025年3月、雪解けが始まるこの頃から山形のさくらんぼ屋たちの作業は本格化する。この時期に心配されるのが「めしべ」が凍ることで、実がつかなくなる霜被害。温暖化によって生育が早まっている近年は、そのリスクも高まっている。芽を守る霜対策は、気温が下がり始める夜に行われる。
上山市のさくらんぼ農家の枝松博さんは、ヒーターを使って畑の空気を温める方法でさくらんぼを霜から守っている。この日の夜の気温はマイナス2.1度。朝まで火をたくことで、木の周りの気温を上げる霜対策だ。燃料代は高騰しているが、霜の予報があれば毎晩のように火を灯す。
「どうしても頑張ってもならないときは仕方がないので、なんとか我々が頑張って、夜遅くでもこうやってならせることができるんだったら、それはしなければならないと思っている。なんとか良いさくらんぼがなってもらえればと思う」(枝松さん)
2025年4月、春が訪れたさくらんぼ畑では、ハチたちが花粉を運び、せっせと働いていた。実がつくかどうかは、ハチの働きにかかっている。
「花粉を今つけていますけど、目に見えないので。なるのかなあ…。神頼みですよ、この仕事は」(駿さん、以下同)
自然に任せるだけでなく、農家も手作業で花粉をつけていく。実がなる確率を上げる作業だ。
「やることをやってならなかったら、また来年に向けた課題で。とにかく今はならせないといけないので、今こういう作業をしている」
しかし、その1カ月後。「少ないね。離れると見えないですもんね。ころころした玉が…」。花が咲いた時期の強風や雨などによって、思うように受粉が進まなかったとみられている。中でも「佐藤錦」の結果は悪く、山形が誇る主力品種は、2024年に続き、2025年も不作となった。
「さくらんぼ、厳しいですよね。果物に関しては工業製品と違うので、お客さんに出したかったけど出せないっていう悔しさはありますけどね」
父・正春さんは「欲でやっているから。今度こそ、今度こそって。昔から『来年百姓』って言うように、失敗しないように努力はしているけど、自然には勝てないんだなやっぱり」とつぶやく。
「孫の時代になったらどうなるんだろうというのは、ものすごい心配するね」(正春さん)
「さくらんぼ、つくってるのかな。自分の次の世代がね。ちょっとクエスチョンマークがつくけど、やっぱり山形県イコールさくらんぼ県なので、そこをどう維持していくのかが一生涯の課題なんだろうなと思いますよ。死ぬまで」(駿さん)
短大を卒業後、すぐに農家を継いだ駿さん。収穫の効率を上げるため、Vの字に真っすぐ木を仕立てる最新の技術を取り入れるなど、チャレンジを続けてきた。
駿さんは「父親も答えのないことをずっと繰り返してきて、現在に至っているので。他の先輩方も。その積み重ねしかないと思う。『来年百姓』今年の結果をみて、来年の反省をする。その繰り返しで、最後は分からず棺桶に入っていく。最後まで分からない、一生、農業人」と笑う。
暑さに強い品種の栽培や新たな挑戦
