■暑さに強い品種の栽培や新たな挑戦
2025年6月、収穫作業をする武田さん親子の姿があった。「前は『7月のさくらんぼ』っていううたい文句だった。まだ6月の半ばだよ、もう熟しているもんね」(正春さん)
武田さんたちが暮らす東根では、6月にも関わらず、30度以上の真夏日が1週間。平均気温は、2024年を上回り“最も暑い6月”となった。昼夜の寒暖差がない影響で、ただでさえ不作の佐藤錦は実が赤くならないまま中身だけが熟す異常な事態になった。
影響が少なかった品種がある。「佐藤錦」の味を受け継ぐ「紅秀峰(べにしゅうほう)」だ。暑さに強く、日保ちがしやすい大玉品種で、武田さんたちはこの紅秀峰への品種転換を進めている。平年に比べて半減した「佐藤錦」に対し、「紅秀峰」は2割減で踏みとどまった。
正春さんは「佐藤錦の時代は終わったな。百数年で。紅秀峰は消費者も絶対受けてくれると思う。大きいし、食べても美味しいし、硬さもあるし」と評価する。駿さんも「かっこいいよね。整然としているし。今後山形のさくらんぼを牽引していくのかな」と期待を寄せる。
続く暑さに、新たな発想で立ち向かうさくらんぼ屋もいる。王将果樹園の矢萩美智さんだ。
さくらんぼのハウスに舞い上がったドローン。光を遮る「遮光剤」をハウスにふきかけることで、中の温度を下げることが期待されている。
「やってみないと分からないので、とりあえずやって、結果をみて継続するかやめるか、そのとき判断すれば良いので。とりあえずやらないと何も始まらないので。変わらないし」(矢萩さん、以下同)
暑さの影響で、また2025年も多かった双子果。規格外としてはじかれてきたが、その見た目を逆手にとった。
「なんで双子果が規格外として扱われるのか分からない。狙ってつくれないものだし、逆に私は高く評価されても良いんじゃないかなと前から思っていて」
店では、「キセキの果実」として、あえて双子果を強調したり、パフェに盛り付けたりして、その魅力を広めようと仕掛けている。
「双子果の魅力を知ってもらえば、必ずチャンスがあると思っていて。やれることがまだあるうちはやり尽くす。トライアンドエラーだと思う」
「一生、来年百姓」農家の終わらない挑戦
