■再建計画をめぐる葛藤、紙さんが下した決断
「第1弾として“賃貸型商業施設”という形で、紙さんや皆さん、朝市エリアでお店ができない方々が営業再開できるような施設を建設していく」(輪島市商店街連合会・高森健一会長)
かつての輪島朝市は紙さんの店「朝市さかば」などが入る「本町商店街」の前に“露店”が並ぶ形態だった。本町商店街については輪島市が元の場所に建物を建築することが決まっているが、問題は露店をどうするか。
「(露店の)朝市組合さんとしては、テントが欲しい、屋根が欲しいとか、要するに“常設型”がいいとか。それを望むと朝市通りでどうやって復興する?みたいな」(高森会長)
露店の場所自体、元の朝市通りではなく、離れたところに常設されるという案も出ていたのだ。こうしたことが定まらないまま、出店する店舗の募集が始まった。
しかし、紙さんは葛藤していた。「朝市が昔みたいな形態ではできないやろ、今じゃ。それやったら俺はもう意味ないと思う。店舗数も減るし、形態も変わるし、なんの魅力も感じない、俺には。昔みたいに朝市の露店やったら朝市の中でものを売り買いできた。野菜を売っている母ちゃんでも魚屋から魚買っている。魚屋は魚売りに来たついでに野菜を買っていくで成り立つ。その形状が成り立たなくなると朝市は存続できない」。
紙さんの下した決断は、「現状では新たな商店街に出店しない」というものだった。「当面、輪島でキッチンカーを続ける?」という問いに、紙さんは「そういうこと」と答えた。
20軒前後を見込んでいた出店の希望は、10軒ほどにとどまった。高森会長は「残念やね。2026年の4〜5月くらいから着工しないといけないスケジュールなんで、それに向けてとりあえずやるしかない」と漏らす。
紙さんはキッチンカーで営業を続けていた。客に話を聞くと、「(売りに来てくれると)助かるよ。輪島(中心部)か宇出津まで行かないといけないから。やっぱり地元でできるだけ買うようにして」と返ってきた。
出店の希望は出さなかった紙さん。それでも元の形での朝市復活という希望は捨てていない。「昔の朝市には多分ならんと思うとるけど、なればいいなと思うとる」。
昔のような朝市が戻ってくることを信じて…
