21日に投開票が行われる参院選。各所で行われる選挙活動の中で、ネットを中心に旋風を巻き起こしていると話題になっているのが、「れいわ新選組」代表の山本太郎氏だ。街頭演説では、政策から生き方について涙を流して訴えている。
「政治は不幸を減らすことはできても、幸せを増やすことはできないのでは?」
山本太郎旋風に対して、独自の視点で疑問を呈すのは、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏。AbemaTVでは21日、『アベマ選挙SP~民主主義オワコン危機(クライシス)~』と題する選挙特番を生放送、Twitterで募集した“ギリギリを攻める踏み込んだ質問”を番組MCの乙武洋匡氏らが政党幹部・政治家に投げかける試みを企画しているが、「#政治家に聞きたいギリギリな質問」について、17日放送の『けやきヒルズ』に出演した若新氏に話を聞いた。
「僕の考えの前提として、国に対して大きな不満はない。というよりも、今はそこまで政治に期待する必要がないと思っている。国がまずやるべきことはベースとなるインフラを支えて『問題解決』することであって、それはなんだかんだいって年々良くなっている。というか、ある程度やれることはやっている感がある。一方で、一人ひとりの幸福や生きがいといった『価値創造』は政治には難しいんじゃないかと思っている。どうやって自分たちの人生をより充実させ意味を見出していくかはものすごく多様だし、正解がない。それは、もはやパブリックに対して期待することではなく一人ひとりが自分で向き合うしかないものというのが僕の考え方。そんな中で、山本氏が政治に対する期待をあそこまで覚悟して呼び起こしているのはすごいと思う」と、自身の考えを述べる若新氏。
山本氏をめぐっては、「テレビ報道で無視しないでほしい」という署名が立ち上げられたり、寄付金も4月の党設立から3億円超を集めたとされ、ある種の“ムーブメント”を作っているとも捉えられる。
そうした流れに若新氏は、「現時点ではインディーズ状態で、期待が先行して、熱狂的なファンから『メジャーデビューしてくれよ』と。ライブハウスでは超絶人気だけど、テレビの尺で舞台に立った時に人気が出るかは別。民主党政権が倒れて以降、できそうにないことは言わないというムードがあるように思う。みんな熱っぽいことを言わなくなって、『問題解決』のテーマもかなり細部の個別具体的なものが焦点になっている。僕は、若い世代はいい意味で政治に期待しなくなった、つまり、みんな人生は政治ではなく自分の問題だと思うようになりつつあるんだと思っていた。だけど、山本氏はもう一度その『政治への期待』に火をつけた」ということを感じたという。
一方で、「山本太郎を応援しているわけではないし、どれだけの人が本当に熱狂しているかはわからない」とし、「政治が重要だったのは高齢者の世代だと思う。政治家がどうするか次第で社会のインフラや一人ひとりの暮らしは大きく変わったわけで、その人たちが政治に興味を持って投票に行くのはわかる。一方で若い世代の人たちは、政治に興味がないというよりも自分の人生のプライベートな時間や空間に意識がいっていて、友達の一言とか既読スルーなんかが一番の問題。年金の問題や劣悪な現場があることは報じられるが、なんだかんだ今の日本は歴史的にも世界的にもそこそこまともな方の社会をつくっている。山本氏が言うような『こんなひどい国』よりも、実は『こんなめんどくさい自意識』とかの方が問題なんじゃないかと思う」と意見。
さらに、山本氏の主張について、「僕が一つズレているなと思うのは、『皆さんが不幸なのは~』ではなく『皆さんがそんなに幸せではないのは~』だろう、ということ」と指摘。「みんながマイナスにいるのではなくプラスを感じづらい時代で、給料がどんどん上がっていく、生活が向上していくといった、“今日より明日よくなる”というわかりやすい喜びやモチベーションがなく、悶々としているのでは。山本氏は自殺問題を訴えているが、その原因の多くは実は『不幸だから』ではなく『幸せじゃないから』なのではないかと思う。その幸せというものは、税金を集めて政策を実施する政治でどこまでつくれるものなのだろうかと。僕はそれには限界があると考えていたが、今回の山本氏の演説を見て、まだみんな政治に期待するんだなと感じた。ただやっぱり、政治は不幸を減らす『問題解決』はできても、幸せを増やす『価値創造』は難しいんじゃないかと思う。今の山本氏は、マイナス部分を刺激して『問題解決』を訴えている。インディーズで加熱した期待にこれから本当に応えていけるかどうか、注目したい」とした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶【21日(日)19:45~】『アベマ選挙SP~民主主義オワコン危機~』
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