2022年カタール・ワールドカップ(W杯)本大会に向け、貴重な強化の場となっている6月の4連戦。その一発目となった2日のパラグアイ戦を4-1で勝利し、日本代表は幸先の良いスタートを切った。
だが、2アシストした原口元気(ウニオン・ベルリン)が「パラグアイ戦はスペースがあってやりやすかった」と語ったように、相手のモチベーションやコンディションに難があったのも事実。この相手に圧勝していても、ドイツ、スペインと同組のW杯本番でグループステージを突破し、ベスト8という悲願を達成できる保証はない。
そういう意味でも、6日に対戦する王国ブラジルとの一戦は、森保ジャパンの現在地を測るうえで非常に重要。「彼らを倒していかないと目標は達成できない」と原口も強調したように、最強軍団と真っ向勝負を演じなければ、日本の未来が開けてこないのは確かだ。
そこで第一に考えるべきなのが、失点をいかに防ぐか。「まずは失点しないこと。それが大前提」と2017年11月に行なわれた直近のブラジルとの親善試合(1-3)に出ていた原口が言うように、簡単にゴールを許していたら、白星への道は見えてこない。
日本は2012年からの10年間でセレソンと4回対峙しているが、2012年10月の親善試合で0-4、2013年6月のコンフェデレーションズカップで0-3、2014年10月の親善試合で0-4、2017年11月の親善試合で1-3と合計14失点。全て開始20分以内に先制点を奪われているという見逃せないデータもある。
得点者では計8ゴールのネイマール(パリSG)が傑出している。2日の韓国戦でネイマールが78分間出場したため、今回の日本戦はスタートから出てくる可能性が低いものの、彼以外にもヴィニシウス・ジュニオール(R・マドリー)やガブリエウ・ジェズス(マンチェスター・C)らそうそうたる面々がいる。
「あのクラスの選手は実際に対峙してみないと分からない部分がある。やっぱり常に先手を取ることを意識しないと止められない」とCBでの先発が有力視される板倉滉(シャルケ)も警戒心を募らせていた。最終予選10戦で4失点という堅守を誇った日本守備陣の真価が今、改めて問われることになる。
今回は冨安健洋(アーセナル)が怪我で別メニュー、酒井宏樹(浦和)も離脱中ということで、6日のゲームは普通に考えると、右から山根視来(川崎)、板倉、吉田麻也(サンプドリア)、長友佑都(FC東京)という先発が有力視される。
しかしながら、相手の左サイドにネイマールやヴィニシウスが陣取ることを視野に入れると、経験豊富な長友が右に回り、左に中山雄太(ズウォーレ)ということも考えられる。
いずれにせよ、ブラジルのアタッカー陣は彼らが個人で止められるレベルでないため、もっと高い位置でボールを奪う、あるいはフリーで勝負をさせないような組織的守備を実践することが肝要。「僕ら最終ラインは局面の1対1で、球際で負けないことが大事になってくる」と板倉も強調していた。
「相手は世界一うまいチームなので、簡単にはがされ続けると難しくなる。そのうえで奪ったあとに自分たちの時間をどう作れるか」と原口もゲームのポイントを語っていた。相手にボールを保持され、主導権を握られるなか、どれだけ最終ラインが耐えられるか。日本としてはまずそこに集中して挑むべきだ。
その森保ジャパンの守備陣だが、今回招集されているメンバーと酒井を加えた陣容でW杯までいく可能性が高い。ただ、昨年マルセイユからJリーグに復帰した酒井は怪我がち、長友も自チームで試合出場時間が減少。W杯の2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会の頃のように、世界最高レベルの強度に確実に応戦できる状態を維持できるという保証はないと言わざるを得ない。
欧州組に目を向けても、冨安が酒井同様、怪我を繰り返していて万全の状態でないのが気がかりだ。最終予選を見ても、出場したのは全体の半分の5試合。2022年に入ってからは一度も代表合流できていなかった。10代の頃からA代表と欧州クラブを行き来する選手は肉体的負担が大きく、コンディションを崩す例が過去にも見られた。冨安も例外とは言えないだけにやはり心配だ。
キャプテン吉田も、サンプドリアとの契約が満了。目下、新天地探しを余儀なくされている。「この2週間に動きがあるのかどうかはエージェントに任せていますし、なるようになるでしょう」と本人は冗談交じりにコメントしたが、彼もJリーグ復帰となれば世界基準から遠ざかってしまいかねない。
板倉と中山もそれぞれ新天地におもむくことになる。よりレベルの高いリーグに身を投じて、コンスタントに出番を得られれば理想的だが、万が一、試合から遠ざかるようなことがあれば、またしても不安が増大する。「日本は優れたCBが多く、DF陣が充実している」という定評が崩れないとも限らないのだ。
ブラジル戦では、こういったネガティブな要素を払拭するような戦いを見せたいところ。ここで手ごたえをつかめれば、森保一監督も、選手たちも、自信を持ってW杯開幕までの残り約半年間を過ごせるはず。もちろんこの先、予期せぬ怪我やコンディション不良などは起こり得るが、選手層の厚さや個々のポテンシャルの高さを示し、セレソンを驚かすくらいの堅守を強く期待したいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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