日本代表の森保一監督がブラジル代表との一戦を振り返った。

6日、日本はキリンチャレンジカップ2022でブラジルと対戦した。

大雨の降るなか、日本代表としては初となる新国立競技場での初陣。ほぼベストメンバーの相手に開始早々に決定機を作られるなどしたが、粘り強く戦った。

この日の日本はブロックを引いて守備を固めるだけでなく、アグレッシブにボールを奪いに行き、攻撃的にもプレー。その中でも、局面を打開してくるブラジルに手を焼き、簡単にボックス内に侵入される回数が増えていった。

試合は前半こそゴールレスで終えたものの、後半の立ち上がりはオープンな展開に。すると、徐々に日本はブロックを引いてカウンターを仕掛ける戦いとなる。

それでもゴールを奪えないと、77分にPKを与え、これをネイマールに決められてしまう。そこからさらに攻勢に出るが、終わってみれば枠内シュートはゼロ。0-1で敗れることとなった。

森保一監督は試合後の記者会見で、勝利を目指した中で、結果が出なかったことを悔しがりながらも、選手たちが見せたパフォーマンスは称えた。

「選手たちに試合前に話していたこと、そして前日の会見でメディアの皆さんにも話した通り、勝利を目指して戦うということで準備して試合に臨みました」

「勝てなくて非常に残念です。我慢強く戦いながらという時間帯が増えることは自然だと思いましたが、選手たちも我慢強く粘り強く戦いつつ、攻撃の姿勢を忘れないでゴールに向かって行くということを見せてくれた中で、結果が伴わず残念に思います」

「惜しいとかではダメなのは分かっているつもりですが、選手たちが今できるベストなことを続けてくれたことは、我々の未来の勝ち点、勝利に向けて積み上げて行くものはあったと思います」

「残念」という言葉で試合を振り返った森保監督。勝てる可能性がある中で、敗戦に終わったことは相当悔しかったようだ。

「選手たちも悔しいという思いを持ってくれていると思いますし、今の言葉は私自身の悔しさだと思っています」

「現段階での力の差は認めないといけないと思いますが、戦い方次第で勝ち点を取れる。今日は一発勝負なので勝ち点になりませんが、リーグ戦であれば勝ち点が取れる、我慢強く勝てるということができたかもしれないという思いが言葉になりました」

「選手たちが今のベストというところで、試合にぶつけてくれたこと、チャレンジすること、アグレッシブに戦うことと我慢強くというのをピッチ上で表現してくれたという、選手たちに対してのポジティブな評価は持っています」

守備面ではボールを奪いに行くところ、ディレイさせるところ、最後に体を張ってブロックするところなど、一定の良さを出していたが、攻撃陣は沈黙。アジアでの戦いとは大きく異なり、伊東純也(ヘンク)や三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)とドリブラーも決定機を作れず、枠内シュートが「0」という結果からも厳しさが際立つ。

「攻撃に関しては、まだ選手たちがやれるというところはあると思います。伊東(純也)の話が最初に出ましたが、オフ明けで、パラグアイ戦も起用していないので、彼が本来持っているパワーはまだまだ出せると、彼に期待する部分、彼はできると思っています」

「三笘(薫)に関しても止められたシーンはありましたが、一対一で相手を上回るところは見せてくれましたし、今日経験できたことでよりレベルが上がった相手に対しても自信を持ってくれたと思いますし、肌感覚で自分がやらなければいけないことも分かったと思うので、必ずレベルアップしてくれると思います」

「攻撃全体ではなかなかこじ開けさせてくれないのが現実的ですが、ビルドアップからでいうと、前半の入りから難しいプレッシャーに遭っていました」

「後半は相手のブロックの中に入っていって、アタッキングサードにも入っていけていたので、途中でやめていたら防戦一方の試合になっていたところを、相手も守備に回る時間を我慢して攻撃することで作れtれいました。継続的にやっていけばシュートの形ももっと作れると思います」

課題はありながらも、それでも攻勢を止めなかったことを評価した森保監督。この試合では、試合前にも語っていた「予測力」が非常に重要になったと振り返った。

「元々ハイプレッシャーに来る時にどう外すかは、昨日の練習で立ち位置は確認しましたが、形ではなく、相手よりどれだけ次のプレーを予測して動き出せるかというところが今日の試合では攻撃でも守備でも必要になると選手に話していました」

「相手のプレッシャーが後半キツくなってきた時に、選手たちが前半からやり続けたことで逆に外せるシーンが増えたのかなと思います」

「日本代表の選手たちはまだまだ伸び代を持っている選手たちで、高いレベルの相手と戦うことで、試合の中でもレベルアップしていける、成長していけるというところを見せてくれたと思います」

「なかなかFIFAランク一桁のチームと対戦することはできませんが、今日のように経験を積むことがもっと日本代表、日本の選手のレベルアップができるかなと思います」

強豪国との対戦は4年前に敗れたロシアW杯のベルギー代表戦以来。現在地については「選手たちのメンタリティとしてはFIFAランクの1位のブラジルに対しても、FIFAランクの一桁の上位と対決しても、メンタル的には全く負けていないという頼もしさ、自信はすごく見せてくれていたと思います」とコメント。「厳しい戦いは当たり前で、完全に理想とはいかなくても、互角に戦えるということは、選手たちがこれまでのW杯の経験で持ってくれているのかなと思います」と語り、100%ではないとしても、物怖じせずにブラジルに立ち向かえたことを評価した。

今日の試合はリードを許す前からも攻撃的な交代カードを切っていた。森保監督は「今日の戦い方のプランとして、基本的には最終予選で中心になった選手を起用しながら、試合の流れによって交代のカードを使っていこうということで考えていました」と語り、「その中で、三笘であったり柴崎であったり、後半の頭から鎌田を入れたりというのは、我々が今チャレンジして行く上で、守備の粘り強さということと、攻撃でギアを上げて行くというところの両方を試せるようにということで、今日の選手起用になりました」と狙いを語った。

また、三笘については攻撃のためだけに起用したわけではないとコメント。「アジアの最終予選ですが、最後オーストラリアでW杯の出場権を決めた試合でも、三笘は攻撃だけのカードと考えられているという見方もありますが、守備も非常に力をつけていて、ハイインテンシティの中で守備でもチームに貢献しながら攻撃でも良さを出すというのは彼が成長しているところです」と語り、「結果的に先制された後の起用になりましたが、今後は守備に期待もしながら、さらに攻撃のギアを上げてくれると考えて起用していきたいと思います」と、攻守に渡って活性化させてくれる選手と考えていることを明かした。

また枠内シュート「0」に終わったFWについても古橋亨梧、前田大然とセルティックに所属するスピードのある2人を起用した。

エースである大迫勇也(ヴィッセル神戸)がいない中で、前からボールを追えてスピードのある選手を起用する形でゴールという結果があまり生まれていない。

森保監督は「数は少なかったですが、背後への狙いを持ったランニングであったり、実際にチャンスになりかけたシーンも作っていましたので、それをより多くということでチームの戦い方のクオリティを縦に早いというクオリティを上げればもっとやれると思います」とコメント。「亨梧にしても大然にしても、起点となるプレーは成長、レベルアップしていると見ています。守備でも善戦で2度追い、3度追いできると。パラグアイ戦でも大然が2度追いしてボールを奪い返して(田中)碧のゴールにつながりました」と、前線で受ける技術もあるとし、「総合的に考えた時にスピードのある選手かつ、前線の起点の能力も上がっている、守備の貢献もできるというチームとしては武器になって行くと考えて起用しています」と狙いがあるとした。

では、ブラジルのような強豪国から勝ち点を奪うにはどうすれば良いのか。森保監督の答えは「攻撃力」というシンプルなもの。「ボールを奪ってから前に運ぶ、相手のプレッシャーを外す部分ではもっともっと上げていかなければいけないと思います」と課題を語り、「選手たちが今できるトライをしてくれて、ほぼクリアで逃げることはなかったと思いますが、ボールを保持しながらもっと相手のブロックに入っていけるように、相手を動かしながら攻撃できるように、もっと攻撃力を上げなければいけないと思います」と、今日もトライした中で、より攻撃に比重をかけられるようにしなければいけないとした。

「そのためにも、立ち位置であったり、我々がボールを持っているときに守備でうまくプレッシャーをかけてくる中、相手の圧力よりも早く良いポジションを取って、ボールを繋げるようにというところを上げていかなければいけないと思います」とし、「守備は1失点しましたが、ボールロストからの切り替え、最後に攻められているところで粘り強く止めるという部分、強豪相手にやらなければいけないことはみせてくれたと思うので、継続しつつ攻撃力を上げていければと思います」と語り、守備は良い状態を保ちながらも、攻撃面に力を出していきたいとした。