パナソニックスタジアム吹田で、久々に日本代表戦を観てきました! 今回はテレビじゃなく、現地観戦したからこそ感じられた分析をしてみたいと思います。

 日本は0-3で負けましたが、その敗因となったポイントと今後の克服すべきポイントを、それぞれ3つずつ挙げていきます。まずは、敗因のところから。

【敗因①:日本対策、心臓部である遠藤航選手を抑えにきた】
 これはテレビで観戦された方も気づかれたと思いますが、チュニジアはかならずFWの選手が遠藤選手を背中で消したり、後ろから追っかけたりしていました。そのため、日本はボール回しが落ち着いてできず、また前半なら鎌田大地選手、南野拓実選手が、後半なら田中碧選手が相手ディフェンスの外側に開いて、しかも味方ディフェンスの近くまで下りてボールをピックアップしていました。

 そうすることで、中心部に選手をあまり配置できず、ボールは外へ外へと回るようになってしまいました。また、遠藤選手のところをチュニジアは「獲りどころ」として狙っていたので、そこからのカウンターアタックの回数もいつも以上に多くなっていました。

【敗因②:1対1で負けても中で耐える。コーナーキックOK、フリーキックOKの守備を貫かれた】
 伊東純也選手、三笘薫選手の突破は敵の脅威になっていましたが、最終的には中央でクリアされる回数が非常に多くなっていました。また、コーナーキックや中盤の位置でのファウルも何度か獲得しましたが、決定的なシーンになり切りませんでした。
 

【敗因③:それぞれのポジション間の連携部分】
 前半、原口元気選手を観ていて一番感じた部分です。彼は相手の嫌がるポジションを常に取っていましたが、ボールを引き出すことがほぼできませんでした。それは他のチームメイトとの距離感やコミュニケーションの点で、居てほしいところと違ったからではないかと感じました。

 相手ボランチの脇でポジション取りをしていても、ボールが出てこないため、中盤でのボール回しのスムーズさがなくなっていました。後半は田中選手が投入されてボールも入りましたが、結果的には前半の鎌田選手が下りて受けていた位置で受ける形になっただけで、「厳しいポジション」にボールを入れてから外に展開する形にはなりませんでした。

 さらに、最終ラインとGKの連携もありました。失点シーンの前にも同じようなシーンが左サイドバックの伊藤洋輝選手との間で起こりました。最終的には伊藤選手の個の能力でカバーしましたが、一瞬の戸惑いがプレーからも見て取れました。

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 次に、今後へ向けて克服ポイントを挙げたいと思います。

【ポイント①:相手が日本対策をしてきた時にどうするのか?】
 これは、アジアの戦いでもオマーン戦、サウジアラビア戦で起きていた現象です。相手が日本を徹底的に分析して嫌がることをしてきた時に、どんな打開策を持つのか。

 チュニジア戦では、遠藤選手が徹底マークに遭った時、高いポジションを取って入れ替わるように鎌田選手が下りて捌いたりしていました。が、それも結果的には効果的ではありませんでした。

 また、チュニジアの攻撃陣は日本とフォーメーションの噛み合わせをずらし、嫌がるポジションでボールを回してきました。ズレを生み出し、遠藤選手を引き出し、空いたスペースにボールをどんどん入れてきていました。日本をしっかり分析してきた証です。

 打開策としては、後半に見せたようにダブルボランチへ早めに変えてみることです(失点をする前に)。または、ボールの回し方、テンポを変えてみる。

 原口選手がいたような厳しいポジションに、どんどんボールを入れたり、相手DFラインの背後、裏へのボールをどんどん増やす。なぜなら、たとえ奪われて相手ボールになったとしても高い位置から守備ができます。前線の選手たちは浅野拓磨選手、古橋亨梧選手、前田大然選手といずれも俊足ですし、遠藤選手の守備の良い部分が前面に出やすいです。

 相手が引いてボールを保持できるからといって、最終ラインでゆっくり動かすより、チャレンジするボールをどんどん入れてボールを失なうほうが、相手チームにとっては嫌だったと思います。ただ、ワールドカップ本番ではここまでポゼッションができるか分からないですが。
 

【ポイント②:1対1で勝ったあと、ゴール前の厚みを出す】
 ブラジル代表にはさすがに止められましたが、ワールドカップ出場国を相手にしても伊東選手と三笘薫選手の突破は止められない域に達しているように感じました。ならば、彼らが抜いたり、交わしたあとのゴール前に入る枚数を2枚から3枚に増やす。それだけでも一気に得点の可能性は高まると思います。

 ほかにも、長友佑都選手が競り勝ったあとのカウンターアタックにも鋭さがありました。伊東選手からのクロスを鎌田選手が決めていれば、という話になりますが、あのようなシーンを何度も生み出すには、守備から攻撃への切り替えのシーンを増やすにかぎります。日本の長所なので、ここは最大限に活かすべきだと思います。




【ポイント③:セットプレー】
 これはアジア最終予選の頃から変わらず、言い続けています。今回残念だったのが、点差が2点に開いたなかで、古橋選手がファウルを受けて久保建英選手が直接フリーキックでシュートを撃ったシーン。チームとして本気でゴールを狙いにいっているようには感じられませんでした。

 久保選手は自分が撃ちたいタイミングで駆け引きなくシュートを撃ちました。他の選手がゴール前のポジションに付く前にです。つまりフリーキックで中の選手に合わすつもりもまったくないわけですから、キーパーは直接飛んでくるボールだけを気にすればいいのです。

 キーパーとボールの間でブラインドになった吉田麻也選手もひとりで立っていましたし、そこに対して久保選手がなにか語りかけることもなかった。セットプレーひとつで本当に大きく流れが変わるはずなのに、「なぜ?」と疑念が浮かびました。

 ショートコーナーを始めたシーンも同じくです。中の選手たちがショートコーナーをやるからと準備をして、「いつでもクロスが入ってきていいよ!」という準備が感じられませんでした。現地では「突破してくれるのかなぁ」「どうなるんだろ?」って眺めているように見えました。

 みんなが統一した意識を持ってほしい。この時間帯ではどのポイント(場所)で、誰が点を取るのかなどを共有して、ゴールを目ざしてほしいと思います。

 少し長くなりましたが、今回の試合は、チュニジアのいなす力、プレッシャーを逆手に取る上手さを感じつつも、日本の真っ直ぐボールを奪いにいく素直さも感じた試合でした。

 ブラジルとの試合で見せたハードワークは日本の武器です。それを効果的に活かせるよう、今回出た課題を克服して、ワールドカップ本番を迎えてほしいです。

<了>

橋本英郎





PROFILE
はしもと・ひでお/1979年5月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、AC長野パルセイロ、東京ヴェルディでプレー。2019年からJFLのFC今治に籍を置き、入団1年目で見事チームをJ3昇格に導く立役者のひとりとなった。2021年5月2日の第7節のテゲバジャーロ宮崎戦で、J3最年長得点(41歳と11か月11日)を記録。今季は関西1部リーグ「おこしやす京都AC」に籍を置く。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場。現役フットボーラーとして奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中だ。173センチ・68キロ。血液型O型。