【日本 0-3 チュニジア キリンカップサッカー2022】

 キリンカップサッカー2022の決勝が14日に行われ、サッカー日本代表はチュニジア代表に0-3と大敗した。

 55分にPKでチュニジア代表に先制された後、60分からピッチに送り出されたMF三笘薫は反撃の先鋒としての期待を背負っていた。しかし、武器であるドリブル突破で左サイドを何度も破ってチャンスを作りながら、ゴールを奪うには至らず。

 焦りを募らせた日本代表は失点を重ね、最終的には3失点を喫していた。

「前半の配置として、チャンスになっているシーンはやっぱり(伊東)純也くんのところや、サイドが起点を作ってのクロスだったので、自分の役割はそこだと思っていました」

 三笘は自らの突破がゴールにつながると信じて、愚直に仕掛け続けた。6日のブラジル代表戦ではDFエデル・ミリトンに止められたドリブルも、チュニジア代表相手にはほぼ完勝。同じようなパターンで何度も相手DFをかわすことができていた。

 それでもゴールには結びつかず。三笘は「シンプルに最後の質と、もう少しうまく人数をかけながらゆっくり攻めるところも必要だったかなと思います」と悔いる。左サイドで1対1ないし2対1の状況を作れていながら、クロスを上げてもゴール前でのシュートに結びついたシーンは少なかった。

 原因はどこにあるのだろうか。

 三笘は「自分が途中で出た時は仕掛けたいという気持ちが強くなっていて、相手が(守備に)複数人かけてもそこに(ドリブルで)行くのか、うまく周りを使いながらチームとして人数をかけていくのかの判断のは自分自身の課題ではあります」と、自らのプレー選択にも原因があると認識している。

 それと同時に、チームとしても三笘がサイドで仕掛ける際の崩しのバリエーションを共有しきれていないとも感じているという。

「今回は結構な長期間ありましたけど、そういうところのチームとしての組み立てをやっていかないと、毎試合こういう流れになって、自分は(ドリブルで仕掛けて)いくだけになって、カウンターを受ける。これは本当に(ワールドカップ)本大会ではやってはいけないので、チームとしてどう攻めていくのかというのは、決まり事ではないですけど、決まったものを持たないといけないと思います」

 ピッチに三笘が入ると、その突破力を信じているからか、ボールが自然と集まってきて1対1を仕掛けられる場面が多くなる。一方で逆サイドにボールが渡る機会は減り、日本代表の攻撃の幅は一気に狭まってしまう。

 攻撃が三笘のドリブルから始まるパターンだけになれば、相手にとっても守りやすい。仮に対面した選手がかわされたとしても、ゴール前でクロスやシュートに対処する準備を整えておけばいいからだ。

 そして、三笘も百発百中で突破できるわけではなく、ボールを奪われることもある。相手もそこから攻撃を始められるなら、そのための準備をしてくる。ボールロストした瞬間に、練度の高いカウンターを食らう確率も高まり、三笘の言う「毎試合こういう流れ」になるわけだ。

 チュニジア代表戦であれば、三笘のドリブル突破を見せつつ、時には逆サイドに振ってMF伊東純也やMF堂安律に仕掛けさせたり、中央のMF久保建英を使って崩したり、複数の形を持っているべきだったかもしれない。相手の守備に目線を絞らせない判断が必要だった。

 今回の日本代表合宿は約3週間あったが、中3日の4連戦ということもあって練習はコンディション調整中心となり、試合に出場するメンバーも毎回大きく変わるなどテスト色が強く、攻撃に関して細部まで詰め切ることができなかった。

「相手に対して狙いはありますけど、狙いの細かさは全然足りていないとは思いますし、まだピッチ内の自分たちでの対応力に(頼って)いってしまってるところはあると思います。そこはいろいろな人たちで議論しながらやっていく必要がありますし、僕自身もそこを選手や監督・スタッフ話しながら構築していければいいと思います」

 三笘自身、途中出場から流れを変える役割を任されることが多く、まだ先発出場の機会は少ない。「個人としてフル出場した時にもっと存在感を出さないといけないというのは自分でも感じていますし、今日のような相手に対して結果を出せないと価値はない」と自覚している。

 それでも日本代表の武器の1つであることは確か。苦しい状況を打開できる爆発力を秘めているだけに、9月の活動で「使い方」の共有をチーム全体で深め、11月のカタールワールドカップ本大会で突破力の効果を極限まで高めて発揮できる状況を作りたいところだ。

(取材・文:舩木渉)