●有効な攻め手を見いだせず

サッカー日本代表は14日、キリンカップサッカー2022でチュニジア代表と対戦し、0-3で敗れた。カタールワールドカップ出場国であるチュニジア代表の思惑にはまり、ミスを連発して大敗を喫した。残り5か月に迫った本大会に向け、課題は変わらない。果たして、今の日本代表に希望はあるのだろうか。(文:西部謙司)
—————————————————-

 強化試合4連戦の最後は完敗だった。ミドルゾーンから守備ブロックを構えたチュニジア代表は、遠藤航をマークして日本代表の組み立てを妨害し、吉田麻也の背後をつく攻撃からミスを誘発して3点を奪った。

 日本代表はボールを保持していたが、伊東純也と三笘薫の個人技以外に有効な攻め手を見いだせず。ワールドカップではドイツ代表、スペイン代表との対戦だけでなく、もう1つの試合(コスタリカ代表戦)も同じぐらい難しいことを再認識させられる内容だった。

 ビルドアップの失敗も相変わらず散見された。4試合すべてで、自陣でボールを失ったことが原因で失点していて、ブラジル代表戦で試した自陣からつなぎきるプランは本大会で行うにはかなり厳しいことも露呈した。

 敵陣でのハイプレスも奪いきれないケースが多かった。崩せず、奪いきれず、カウンターに弱いとなると、ボールを保持できて攻め込める相手に対しての準備ができていない状態といえる。

●伊東純也・三笘薫の突破以外でモノになりそうな形は…

 前半は伊東の突破からのチャンスが多く、鎌田大地が合わせそこなったクロスボールは最大の決定機だった。

 伊東の個人技以外では、ポケットへの侵入が3回ほどあった。左サイドは伊藤洋輝から南野拓実へのルート。右は原口元気から伊東、あるいは伊東から原口。ポケットへの侵入はこれまでも試みてきた攻め込みで、伊東・三笘の突破以外でモノになりそうな形といえばこれだろう。

 後半は相手が引いたことでスペースがなくなり、ブロックの手前でパスを回しながら隙をうかがう展開になった。そして、こうなったときの日本代表はだいたい確信がなくなる。

 遠藤が集中的にマークされていたが、CBの吉田や板倉滉が代わりに組み立ての起点となることもあまりなく、前線も相手の間には立っているがそこをどう使うかのアイデアもはっきりしない。上手く展開できそうになったところでパスミスが出るなど、ちぐはぐな攻撃になってしまっていた。

●新しいものは何もない。ポジティブに考えれば…

 三笘の投入から、三笘の大外と伊藤のハーフスペース、南野の中央と立ち位置が明確になったものの、アイデアは相変わらずほぼ戦術・三笘。三笘と伊東は間違いなく警戒される。チュニジア代表も三笘には二重三重の壁で対処していた。

 それでもこれしかないのが目下の課題だが、相手が伊東と三笘に引き寄せられるので違う攻め込みルートを見出すのは比較的容易なはずだ。ワールドカップを考えると、結果的にまだそれを見せていないのはポジティブに考えれば良かったかもしれない。

 70分に久保建英と堂安律が交代出場。この2人のコンビネーションが期待されたが、相変わらず決定版といえるほどの威力は示せなかった。古橋亨梧の活かし方も依然として判然としない。

 カードはいくつか切っているけれども新しいものは何もなく、三笘と伊東の個人技以上の効果も出ていない。EAFF E-1サッカー選手権でよほどの発見でもないかぎり、ワールドカップまでこのままになりそうだ。

 最後にさまざまな課題を露呈して敗戦となったわけだが、過去のワールドカップでも日本代表は現実に直面して開き直ったときのほうが力を発揮できる傾向があるので、ラストスパートに期待したい。

(文:西部謙司)

【了】