7月19日から27日の日程で行われたEAFF E-1選手権の決勝ラウンド。国際Aマッチデーではない時期に開催され海外組を招集できないことから、サッカー日本代表にとって、従来と違うメンバーを試せる貴重な機会でもあった。
日本代表を率いる森保一監督は、Jリーグで上位を走る横浜F・マリノスやサンフレッチェ広島といったチームからメンバーの多くを選出。メンバーを入れ替えながら香港、中国、韓国を相手に3試合を戦い、2勝1分けで4大会ぶり2回目の優勝を果たしている。
ここでは、短期決戦のE-1選手権において、今後FIFAワールドカップ・カタール(カタールW杯)でのメンバー選出にも絡むであろう活躍をした選手5名を紹介していく。
相馬勇紀(名古屋グランパス)
まずはE-1選手権の大会MVPにして得点ランキングも同率1位となったFW相馬勇紀。3試合で3得点2アシストとまさに大車輪の活躍で優勝に貢献。プレースキックでの得点や、左サイドの突破など明らかな違いを見せた。東アジアという限られた相手の中ではあったが、レベルの高さは海外組を入れても十分にメンバー入りの資格があると言えるだろう。
Jリーグでは、名古屋グランパスで左サイドの主力として活躍。2022シーズン得点は1アシストは0と、昨シーズン(得点2アシスト8)と比較すると少ない数字で推移しているが、ドリブル突破からのチャンスメイク能力が高いことに変わりはない。東京五輪でも森保監督からメンバーに選ばれており、信頼関係も申し分ない。攻撃陣は層も厚くハードルは高いが、9月に予定されるW杯前最後のテスト機会となる国際親善試合を生かせるか、今後のJリーグでの活躍にも大いに期待がかかる。
町野修斗(湘南ベルマーレ)
E-1選手権では相馬と並び得点ランキング1位となったFW町野修斗。リーグ戦ここまでやや不本意な順位に落ち込む湘南ベルマーレにあって、チーム最多の8得点を上げている攻撃の要だ。現代表で同じポジションとなる大迫勇也や浅野拓磨といったFW陣の得点力がたびたび問題視されることもあり、カタールW杯はもちろん、その後の代表FW候補として期待という重圧のかかる中での初選出となった。
結果は3試合で3得点と、重圧を跳ね除け数字で応えた町野。もちろん海外組が入った際の連携面や経験においては、他の候補に比べて劣るのは確かだ。一方で、森保監督は東京五輪の際にバックアップメンバー林大地をスタメンに抜擢した前例もある。W杯に向けてサプライズを起こせる選手の1人として、Jリーグでの活躍に注目だ。
藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)
AFC U-23アジアカップにおいて中心選手として活躍し、E-1選手権でフル代表デビューとなったMF藤田譲瑠チマ。今2022シーズンより徳島ヴォルティスから横浜F・マリノスへ移籍し、現在リーグで首位を走るチームに所属。若干20歳でありながら実に冷静かつ的確なプレーを選択し、良い意味で驚かせてくれた選手の1人だ。
E-1選手権では香港戦と韓国戦の2試合に出場し、いずれもアシストを記録するなど優勝にも貢献。カタールW杯に向けて、田中碧や守田英正とポジション争いのライバルは強力だが、メンバー入りも十分考えられる力を見せたと言えるだろう。しかし、横浜FMでは必ずしもスタメンが約束されているわけではない。W杯のメンバー入りを前に、まずは残りのシーズンいかにクラブで出場機会を増やし、アピールし続けられるかがカギになる。
小池龍太(横浜F・マリノス)
両サイドバックをこなしつつ、高い攻撃力を誇るDF小池龍太。長友佑都(FC東京)や、酒井宏樹(浦和レッズ)という長く代表を牽引してきたサイドバックの後釜が定まらない現状において、貴重な存在であることは間違いない。今2022シーズンJリーグでは3得点を上げるなどしている。
E-1選手権においてもスピード感あふれるオーバーラップなど攻撃へ迫力を加えることに大きく貢献していた。特に韓国戦では、3点目の見事な崩しにアシストという形で絡んでいる。カタールW杯のメンバー入りについては、酒井はもちろん同じく今大会活躍を見せた山根視来(川崎フロンターレ)など、候補は少数精鋭といった状況。しかし、現在首位を走る横浜F・マリノスに所属していることも加味すれば、攻撃面のアピールはしやすい環境にいるとも言える。ライバルは強力だが、残りのシーズン約半分でどれだけ序列を上げられるかに注目だ。
西村拓真(横浜F・マリノス)
相馬、町野には及ばなかったが、E-1選手権で2得点を上げる活躍を見せたFW西村拓真。元来ゴール前での落ち着いたボールコントロールやシュートの上手さには定評があった。今2022シーズンは活躍の場を横浜F・マリノスへと移し、トップよりやや下がり目の位置での起用によってさらに研ぎ澄まされた印象だ。
代表において海外組を含めての起用を考えれば、ライバルは鎌田大地と思われるが、ことゴール前での期待感という意味では存在価値をアピールできたのではないだろうか。カタールW杯では選出できる人数がこれまでの23名から26名に増えている。とはいえ、攻撃的なポジションはこれまでアジアカップやW杯アジア最終予選を戦っていた選手でさえ、メンバー入りを確約されていないのが現状だ。限られた枠に入るには、Jリーグでより高い評価を出すことが必要不可欠だ。