【識者コラム】W杯グループ初戦でドイツに逆転勝ち、英国人記者が監督の采配へ注目
森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)のグループE初戦でドイツ代表と対戦し、2-1の逆転勝利で大金星を飾った。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、カタール大会でW杯を7大会連続で現地取材する英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、強豪国相手に勇気ある采配を見せた指揮官を称えている。
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日本はセンセーショナルな逆転劇でワールドカップ(W杯)史上最高の結果を得たが、前半にドイツ相手に握ったポゼッション率はわずか15%だった。
ハーフタイムのホイッスルが吹かれた段階で、サムライブルーはどん底の淵にいた。しかし、ドイツが完全に支配していたにもかかわらず、MFイルカイ・ギュンドアンのPKでしか得点を決められなかったことが、その後の破滅を招いた。そして、森保一監督は後半に巧妙な戦術の微調整を行った。
前半の45分、日本は6月のブラジル代表との親善試合と同様、格上と見られた相手に大半のボールポゼッションを譲った。
しかし、後半になると監督はチームに大きな変化を加えた。交代選手をうまく使い、システムを変更。これが4年前のロシアW杯の時の脆さを残したままのドイツ相手に大きな効果を発揮した。
4年前のドイツはグループリーグで韓国代表に敗れていたため、4度の優勝経験を持つドイツはW杯でアジア勢に連敗したことになる。これだけでも驚くべき記録だ。
日本はボールを危険な位置へ素早く運ぶことさえできれば、ドイツの4バック攻略は十分に可能だった。
後半開始と同時に森保監督がDF冨安健洋を投入したことがこの試合の勝敗を分けた。アーセナルの冨安がスタメンから外れたことは驚きだったが、彼の途中出場が違いを生み、日本の逆転勝利の土台になったのだ。
ほとんど機能していなかったMF久保建英の代わりに冨安が入ったことで日本は3バックとなり、DF長友佑都と代わったMF三笘薫とDF酒井宏樹がそれぞれのサイドを押し上げることができた。
中盤では中央をMF遠藤航がほとんど1人でカバーし、MF田中碧が前に出ていくことでスピードのないドイツを攻略した。GK権田修一は前半に酷いミスを犯してPKを献上したが、それを4つの見事なセーブで帳消しにした。
しかし、そうした中でも最も大きな違いを生んだのは、後半の怒涛の選手交代だった。MF堂安律は得点の4分前に投入され、MF南野拓実はわずか数秒で試合に影響を与えた。南野のシュートはGKマヌエル・ノイアーにセーブされたが、そのこぼれ球を堂安がネットに収めた。
FW浅野拓磨もベンチからの出番でノイアーから決勝点を奪った。同点ゴールから勝ち越しゴールまでの8分間は、前日にアルゼンチン代表から歴史的な勝利を挙げたサウジアラビア代表のパフォーマンスに匹敵するような魅惑的な時間だった。
日本はもっとリードされてもおかしくない展開だった。しかし、勇気ある戦術的決断でドイツの弱点をついた森保監督の功績は大きかったと言えるだろう。(マイケル・チャーチ/Michael Church)