日本代表は9月19日に、ドイツ・デュッセルドルフで合宿をスタートさせた。2日目の20日には、合流が遅れていた長友佑都(FC東京)、権田修一(清水)、相馬勇紀(名古屋)の国内組3人も到着。ようやく30人全員が揃った。
現時点ではまだコンディションにバラつきがあるため、全員が約2時間の練習で、調整の全てをこなしたわけではなかった。それでも、フィールドプレーヤー19人は10対9+GK、9対9+フリーマン+GKなどの実戦形式を消化した。
主力組と見られる側には、最前線に前田大然(セルティック)が陣取り、2列目は右から原口元気(ウニオン・ベルリン)、鎌田大地(フランクフルト)、南野拓実(モナコ)が入るという4-2-3-1の形をとっていた。23日のアメリカ戦は、最終予選の序盤までベースにしていたこの布陣で戦う可能性が高まった。
そこで気になるのは、FW陣の起用法と役割だろう。この日、古橋亨梧(セルティック)は途中でクールダウンに回ったため、ゲーム形式には参加しなかった。だがおそらく古橋が現状でのファーストチョイスと見られる。
ご存じの通り、ボールを収めて時間を作れる大迫勇也(神戸)、前線で身体を張れる浅野拓磨(ボーフム)が負傷離脱している今、日本はこれまでとは異なる戦い方を見出さなければならない。それは前田が入った時も同じ。いかにしてスピード系の1トップのストロングを生かしつつ、得点を狙っていくのか。そこはカタール・ワールドカップ(W杯)につながる重要なテーマと言っていいだろう。
「これから試合をする相手は、アジア最終予選と違って自分たちと同等かそれ以上のチームが増えていく。僕自身、速い選手がいてくれたらやりやすさをもっと感じるだろうし、試合展開も守ってカウンターだったりになると思う。今のサッカー界は足が速くてナンボだし、そういう選手が日本にはたくさんいる。それはすごく良いことかなと思います」
久しぶりにトップ下でプレーしそうな鎌田も、世界基準を踏まえつつ、こう語っていたが、ドイツやスペインと対峙する場合、確かに日本はボールを握られ、守勢に回る時間が長くなる。そうなれば、やはりショートカウンターからのゴールを虎視眈々と狙っていくのが得策だ。それを具現化するためにも、走れて敵を追いかけ回せるアタッカーが前線にいたほうが効果的。そう考えるのが自然だ。
彼らFW陣にラストパスを供給するボランチの守田英正(スポルティング)も「自分が縦に速いチームに行ったので、スピードある選手や裏抜けする選手に良いボールを配給できるという自信を持てている」と前向きにコメントしていた。
守田と中盤でコンビを組むであろう遠藤航(シュツットガルト)も、クラブではインサイドハーフを務める場合が多く、縦への意識は確実に上がっている。そういったメリットを生かしながら、古橋、前田らと息を合わせ、素早い攻めからのゴールを奪えれば、「脱大迫・浅野」の道筋も見えてくるはずだ。
実際、10年前の2012年ロンドン五輪でも、日本は初戦のスペイン戦で永井謙佑(名古屋)を最前線に配したハイプレス戦術でぶつかり、敵を凌駕し、1-0で勝利している。スペインが、余裕を持ってボールを回すのを妨いだうえでボールを奪い、永井のスピードを生かしてチャンスを作り、大津祐樹(磐田)のゴールにつなげたのだ。
試合に出ていた権田や吉田麻也(シャルケ)、酒井宏樹(浦和)は当時のイメージが頭の片隅にあるのではないか。そして似たような試合運びを意識していけば、金星獲得への道が開けてくるのではないだろうか。
今回のメンバーには、上田綺世(サークル・ブルージュ)と町野修斗(湘南)という異なるタイプのFWも控えている。2人も魅力あるFWだが、7月のE-1選手権で台頭した町野は国際舞台での経験不足がどうしても否めない。今回の出場チャンスはそう多くなさそうだ。
森保一監督が、前々から期待を寄せる上田は、ベルギーで今季2点を叩き出していて、世界基準への適応速度を引き上げている。ただ、やはり上田は「ザ・ストライカー」。日本が主導権を握って攻める状況で出場したほうがより脅威になれる。
ドイツ、スペイン戦を想定して思い切ったチャレンジをするなら、爆発的速さのある古橋や前田のほうがメリットが多い。その起用に目途がつき、大迫や浅野が本番に間に合えば、日本はより幅広い選択肢を持ちながらカタールW杯に挑めるようになる。
ポジティブな状態に近づけるためにも、まずはアメリカ戦で内容ある勝利を追い求めるのが肝心。日本人の特長であるスピードや俊敏性、ハードワークといったストロングを最大限、有効活用して、主軸FW離脱の困難を乗り切ってほしいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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