日本代表は9月23日にアメリカ代表と対戦して、2-0で勝利した。カタール・ワールドカップに向けて最後の調整の場となっているドイツ遠征の初戦だったが、その勝利にはどのような意味があったのか。ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り尽くした。
■前線で見えた連係の不足
――これまでとは違う選手も出て、違う戦いぶりを見せてくれました。
大住「ヨーロッパで試合にコンスタントに出て、パフォーマンスが良い選手を使ったよね。だから、南野拓実も出られなかったわけだけど、それだけに出た選手たちは全員、動きが良かったよね」
後藤「調子の良い選手を使おうと思ったら鎌田大地を入れざるを得ないから、システムを4-2-3-1に変える。そういう考え方の順番だったね」
大住「久保建英も調子は良かったね。ただ、少し気になったことがある。前半、久保はあまりにも左サイドにいすぎた感じがするんだよね。左サイドのポジションからスタートするにしても、もっと自由に動いて、中央でプレーする時間を増やした方が、彼自身も活きたと思うんだけど。少し遠慮しているのかな」
後藤「CFの前田大然と右の伊東純也、久保という3人と、トップ下に入った鎌田大地のコンビネーションが、初めて組んだ形だからかもしれないけど、まだできていないという気がする。パスがちょっとずれたりね」
大住「前田自身は、とても良かったと思う」
後藤「前田のプレッシングはすごいよね。あそこでプレスをかけるから相手はつなげなくて蹴ってしまい、そのボールをカットするところから何度も日本はチャンスをつくっていた」
大住「アメリカが下手に見えるくらいに、中盤でカットできるボールが多かったけど、あれは前田のおかげ」
後藤「前田がいなくなった後半には、アメリカもボールをつなげるようになっていた。それだけが原因じゃないかもしれないけど、前田が後半も出続けて走っていたら、アメリカもあそこまでパスをつなげなかったよね」
大住「前田のプレスを前にCBが2人じゃ心もとないから、アメリカは後半から3バックにしていた。そのくらいに前田には追い回す力があるよね」
後藤「やれと言われれば、前田なら90分間それを続けられるだろうしね」
■前田は良い圧力のかけ方をしていた
大住「前田の交代は予定通りだったみたいだけど」
後藤「そうそう。この遠征では、いろいろな選手を試すんだから。でも本番を考えれば、70分間でもいいから、いけるところまでとにかく引っ張るのもひとつの手だよね。伊東も頑張って走っていたし」
大住「今回は守備も攻撃もすごく連係が良くて、ひとりが追ったら、次のところでもうひとり来てパスコースを限定して、次のところでカットという形が、特に前半多かったよね」
後藤「チャンスはほとんどそこからできていたもんね」
――1トップの前田のプレスに引っ張られるように、でしょうか。
後藤「前田に引っ張られるのと同時に、守田英正も遠藤航が後ろで支えたので前の選手もプレスにいけた」
大住「前田がすごく良い圧力のかけ方をするから、後ろにいる選手たちも相手のプレーを読みやすいと思うんだよね」
後藤「しかもアメリカが押し返してきた前半の終盤には、後ろの方で跳ね返すだけにして、それほど無理にプレスをかけにいかず、しっかりコースを消すようにしていた。そういう全体のバランスというか、ゲームの流れを見ながらプレスのかけ方も変えることもできたし、非常にうまかったよね」
大住「前日会見でも、森保一監督はそういう話をしていた。理想を言えば、前から取ることなんだけど、そうじゃなければしっかりブロックを敷いてピンチの場面をつくらないと。そういう展開でも積極的に守ると話していたから、考えていたことが割りと表現できていたと感じたな」
後藤「前半のプレスにいけない時間帯には状況に合わせた守り方をしたし、アディショナルタイムの2分間には、後ろで確実にボールをつないで時間をつぶすとか、かつてないほどよくコントロールができていた」
■無理のなかった負荷のかかり方
――おふたりが試合前にテーマとして挙げていたように、チームとしての守備ができたのですね。
後藤「予想よりも、はるかによくできていたね」
大住「ディフェンスラインに無理がかかっているとか、ちょっと前線の負担が大きすぎるとか、どこかに無理がかかるということはなく、チーム全体の負荷が非常にバランスが取れていて、すごく一体感があったよね」
後藤「かつてないほど、うまくゲームを運んだよね。あれで早めに2点目を取れていたら、完璧な試合だったんじゃないかな」
大住「前半のうちに、もう1点取れていてもよかったしね。アメリカがちょっと拍子抜けという感じはあったけどね」
後藤「クリスティアン・プリシッチが欠場した影響もあっただろうね。現地では、どういう情報だったのかな」
大住「ケガらしいよ。翌日にはトレーニングできるだろう、と言っていたけど。おかげで攻撃陣にタレントが欠けた感じはあったとはいえ、アメリカは元気がなかったよね。そう見えるくらいに日本がうまくやっていたとも言えるけど」