11月20日に幕を開けるカタール・ワールドカップ。4年に一度の大舞台では、どんな戦いが繰り広げられるか。本稿ではグループごとに出場国の横顔を紹介し、決勝トーナメント進出に向けた争いを展望する。今回はCグループだ。
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■アルゼンチン
(13大会連続18回目の出場)
昨年のコパ・アメリカでは、決勝でブラジルを破って優勝。エースのリオネル・メッシ(パリSG)は前線のストライカーというより、ゲームメイクから関わり、点を取らせる側に回るケースが多い。運動量は多くないが、ピンポイントの守備貢献も見せる。
南米予選はブラジルに次ぐ2位で、数試合を残して突破を決めたのはリオネル・スカローニ監督の率いるチームが、攻守のバランス良くまとまっているから。今年6月のイタリア戦も3-0で完勝。その後の親善試合でも無失点を続けている。
不安要素は攻撃陣のコンディションだ。コパ・アメリカ決勝で優勝に導くゴールを挙げたアンヘル・ディ・マリア(ユベントス)が、ハムストリングの負傷で大会開幕ギリギリでの復帰となり、パウロ・ディバラ(ローマ)も怪我で出場が危ぶまれている。
ただ、ラウタロ・マルティネス(インテル)が堅調で、“アグエロ2世”と期待されるフリアン・アルバレス(マンチェスター・C)も台頭。やはりC組の大本命なのは間違いない。
■メキシコ
(8大会連続17回目の出場)
7大会連続でベスト16敗退という「珍記録」を継続中のメキシコ。すでに2度のベスト8を経験しているが、カタールでは必ず突破したい壁だ。
その大役を担うのは、2010年の南アフリカ大会でパラグアイをベスト8に導いたヘラルド・マルティーノ監督。バルセロナを率いた過去もあるが、攻守のバランスを重視するタイプで、4-3-3でパスワークをベースとしながら、試合の状況に応じたゲームコントロールと、接戦での勝負強さを植え付けようとしている。
チームの中核は、前回大会から主力のエクトル・エレーラ(ヒューストン・ダイナモ)やイルビング・ロサーノ(ナポリ)。精神的な支柱は、ベテランのエクトル・モレーノ(モンテレイ)やアンドレス・グアルダード(ベティス)だが、若い世代からエドソン・アルバレス(アヤックス)やカルロス・ロドリゲス(クルス・アールス)も台頭している。
さらに昨年の東京五輪で銅メダルを獲得したメンバーも加わり、堅実さと勢いを融合してベスト16の鬼門に挑んでいく。
■ポーランド
(2大会連続9回目の出場)
躍進が期待された前回大会は、セネガルとの初戦でつまずくなど、グループステージ敗退に終わった。当時29歳だったエースのロベルト・レバンドフスキ(バルセロナ)など、主力は確実に年齢が上がってしまったが、幸いにもレバンドフスキは衰えどころか、ますます決定力やゴール前の勝負強さが増している印象だ。
その大エースを筆頭に司令塔グジェゴシュ・クリホビアク(アル・シャバブ)、ディフェンスリーダーのカミル・グリク(ベネベント)、守護神ヴォイチェフ・シュチェスニー(ユベントス)という経験豊富なセンターラインは、欧州プレーオフからチームを率いるチェスワフ・ミフニエビチ監督も強く信頼しているようだ。
前線ではレバンドフスキの相棒として、怪我で消化不良だったFWアルカディウシュ・ミリク(ユベントス)の爆発にも期待だが、9月に行なわれたネーションズリーグのウェールズ戦で、決勝ゴールを決めたカロル・シフィデルスキ(シャーロットFC)がニューヒーローの座を狙っている。
卓越したテクニックと攻撃センスを誇るピオトル・ジエリンスキ(ナポリ)も、彼らFW陣のアシスト源として期待される。
■サウジアラビア
(2大会連続6回目の出場)
アジアの戦いでは圧倒的なポゼッションをベースに、相手陣内で多くの時間を過ごしてきた。そこからのフィニッシュの迫力不足という課題はあったが、フランス人のエルベ・ルナール監督が率いる中東の雄は、W杯本番で違った問題に向き合う必要がある。
明らかに攻め込まれる時間が増えそうなアルゼンチン戦とメキシコ戦、さらには世界屈指のFWレバンドフスキがエースのポーランド戦で、よりタイトな守備や縦に速い攻撃が求められる。そうした実情もあってか、指揮官は予選後のテストマッチで4-2-3-1から4-1-4-1にシステムを変更した。
9月の試合では、エクアドルとアメリカ相手にスコアレスドロー。無論、ポゼッションは捨て去れないだろうが、少ないチャンスにエースのフィラス・アル・ブライカン(アル・ファテフ)が決め切るシチュエーションも想定する必要がある。
10月と11月で5試合の強化試合が組める上に、近隣国カタールでのW杯を前に、早めから準備できるのは国内リーグの選手しかいないチームの強みだ。
【グループC展望】
優勝候補でもあるアルゼンチンを筆頭に、チームカラーがはっきりした国が揃っており、波乱の可能性も潜んでいるように思う。
最も力が落ちると見られるサウジアラビアも今回は中東開催であり、環境的なアドバンテージに加えて、カタールと同様に、国際Aマッチデーではない時期にも代表活動や強化試合を組める。大会前の集合も、ライバルよりはるかに早めることが可能だ。
そのサウジアラビアは、アルゼンチンといきなり初戦で対戦するが、アッと言わせる結果になるのか。それとも順当にアルゼンチンが勝利するのか。下馬評では突破の2枠目と見られるメキシコとポーランドも特長がまったく異なるので、どちらがより自分たちの強みを出せるかがポイントだ。
そして、このグループ最大の注目がアルゼンチンとメキシコ。過去にも好ゲームを繰り広げており、必ずしも前者が優位とは限らない。アルゼンチンがもし、ここで好敵手に敗れた場合は、3試合目のポーランド戦で一気にプレッシャーがかかってくる。
サウジアラビアも前回はエジプトを下しているが、この中東の雄が完全なアウトサイダーで終わるのか、台風の目になるかでもまるで違う様相になりそうだ。
文●河治良幸
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