はたしてソン・フンミンはワールドカップ本番に間に合うのか。韓国のサッカーファンは気が気でない毎日を過ごしているだろう。
【画像】歓喜に沸くトッテナムの控室。ソン・フンミンも記念撮影に収まるが顔は異常に腫れ上がって…(右端が選手本人)
ハプニングが起こったのは現地火曜日だ。チャンピオンズリーグ最終節、マルセイユ(フランス)の本拠地に乗り込んだトッテナム・ホットスパー(イングランド)は試合終了間際の決勝点で2-1の勝利を飾り、グループ首位突破を手繰り寄せた。
その22分過ぎだった。トッテナムの韓国代表FWソン・フンミンが相手DFのシャンセル・ムベンバと空中戦で激突。屈強ストッパーの右肩が顔面をヒットし、ソン・フンミンはピッチに倒れ込んだ。数分の治療後、ソン・フンミンは無念の負傷交代を余儀なくされる。
当初はさほど患部が腫れ上がっていないように見えたが、ファンが衝撃を受けたのは試合後のロッカールームで撮影された一枚の写真だった。歓喜に沸く選手たちとともにソン・フンミンも記念撮影に収まったが、大きく顔を腫らした痛々しい姿が映し出されていたのだ。
クラブは翌日に「ソン・フンミンは左目の骨折箇所を安定させるために手術を受ける。術後はメディカルスタッフとリハビリに入る予定だ」と発表。これを受けて英国や韓国のメディアではワールドカップ出場を絶望視する向きが一気に強まった。かたや楽観論を展開する者も少なくなく、「フェイスガードを付ければ大丈夫」「大会途中からでも復帰はできる」といった意見もあるが、いずれにせよ、新たな情報の更新に神経をとがらせている。
そんななか、韓国全国紙『スポーツソウル日本語版』が専門医による現実的な見解を紹介し、ソン・フンミンのワールドカップ出場の可能性を模索した。
まず意見を聞いたのは、ソウルのJW眼科で院長を務めるチェ・ジョンウォン氏だ。「眼科骨折手術は通常、腫れが引いた1週間後に眼球陥没、複視、眼球運動の制限の程度によって決定する」とのことで、「手術時には骨折部位に挿入物を入れ、眼底組織が抜けないようにするために少なくとも4週間以上は必要だ」との私見を述べた。
さらに、テジョンのセボム眼科院長で、整形部門の専門医であるノ・ジュンホ氏は、「(接触時の)映像を観ると、競り合う過程で相手選手の肩に顔面の左部分をぶつけたようだ。現地で眼窩骨折と診断された場合、頬骨や上顎骨周辺の骨折を疑わなければならない」と診断したうえで、次のように続けた。
「眼窩骨折は無条件に手術するわけではない。複視や顔面の輪郭の変化など、さまざまな機能上の問題を考慮するが、現地で手術を行なうとの決定が下されたのは、このような側面を総合的に判断してのことだろう。激しく運動する選手なだけに、二次負傷の恐れがある」
同医師は一般論として、「骨折は手術をしない場合でも、6週間以上の回復期間を設けたほうが良い。医者の立場としては(プロテクターなどで)保護をするとしても、格別の注意が必要だと思う」とも付け加えた。
『スポーツソウル日本語版』は「事実上、正常なコンディションで代表に合流することは不可能になった。すなわち、ソン・フンミンのカタール行きは“超人的回復力”にかかっているといっても過言ではない」と論じる。一方で、「ソン・フンミンは過去にも、右腕の再骨折やハムストリング負傷などを経験したが、いずれも予想より早く回復して実戦に復帰した。準備された身体能力と経験が調和した結果だ」とも記し、期待を込めた。
そして最終的に同紙は、「現時点でパウロ・ベント監督は、ピッチ内外で代表の精神的支柱の役割を果たすソン・フンミンをひとまずチームに帯同させ、回復具合を見て試合に投入するのではないかという見立てが大多数を占めている」との一文で締めくくった。
アジアのスーパースターは自身3度目の大舞台に立てるのか。韓国はワールドカップ本大会でグループHに組み込まれ、ウルグアイ、ガーナ、そしてポルトガルとの3連戦に臨む。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部