新興チームRBライプツィヒで今季からプレー
ラウムが所属するRBライプツィヒは、創設からわずか8年でドイツ1部のブンデスリーガに昇格を果たした新興チームながら、親会社であるレッドブル社の潤沢な資金力と系列クラブとの密接な関係性を活かして瞬く間に国内屈指の強豪に成長した。だが、今季は開幕から不振に陥って前監督のドメニコ・テデスコを解任。後任にはレッドブルグループで実績を残したマルコ・ローゼを招へいし、同グループの代名詞とも言えるハイプレスを今一度突き詰めようとしている。
今夏、ホッフェンハイムからライプツィヒに加入したラウムだが、チームの不振に巻き込まれて調子を落としてしまっている。左サイドバックのレギュラーこそ確保しているものの、細かなプレー精度や周囲との連携に課題があり、期待されているパフォーマンスをなかなか披露できていない。ただ、10月に入ってから復調の兆しが見られ始めているのはドイツ代表にとっても朗報だ。
ユーティリティプレーヤーからサイドバックのスペシャリストへ
ドイツのニュルンベルクに生を享けたラウムは、4歳の時に地元のクラブでサッカーを始めると、隣町のクラブであるグロイター・フュルトの下部組織に引き抜かれた。ユース時代はMFとしてプレーしており、2016-2017シーズンにはU-19チームで10得点12アシストを記録している。その活躍が認められてU-19ドイツ代表に選出されると、世代を代表するタレントとして知られるようになっていった。
2016-2017シーズンにトップチームデビューを飾ると、2017-2018シーズンにはブンデスリーガ2部で20試合に出場するなど完全にトップ定着を果たす。当時のラウムはユーティリティプレーヤーとしての活躍を期待されており、左右のサイドハーフやサイドバックを行ったり来たり。時にはセンターフォワードで使われることもあった。転機となったのは2019-2020シーズン。当時の監督だったシュテファン・ライトルはラウムを左サイドバックに固定することを決断する。このシーズンは19試合のプレーに留まったが、翌年はリーグ戦で全試合に出場してチームを1部昇格に導く活躍を見せると、シーズン終了後には東京五輪に臨むドイツ代表にも選出された。
2部リーグ最高の左サイドバックと呼ばれ、1部クラブからも熱い視線を浴びるようになったラウムは、2021年夏にホッフェンハイムに活躍の場を移す。加入後すぐさまレギュラーを掴むとアシストを量産し、シーズンを通してチームの攻撃を牽引する活躍を披露。自身初の1部挑戦ながら3得点13アシストという印象的な数字を残し、2021-2022シーズンのリーグ公認ベストイレブンに選出された。オフにはバイエルン・ミュンヘンやプレミアリーグのクラブからの関心も噂される中、ライプツィヒに移籍しステップアップを果たした。
高速クロスが武器の攻撃的なサイドバック
広い視野と高いテクニックを兼備し、正確なクロスでチャンスを演出する攻撃的な左サイドバック。元MFらしくショートパスも正確で、味方のパスコースを作るポジショニングにも長けている他、ビルドアップでの貢献度も高い。それでいて90分間上下動を繰り返すことができるスタミナも備えている。
最大の武器は左足から放たれる高速クロスだ。低弾道のアーリークロスと敵陣深い位置からの折り返しのクロスを状況に応じて使い分け、シーズン二桁アシストをコンスタントに記録している。
一方でディフェンス面にはまだまだ課題も多く、対人守備の際に相手に簡単に突っ込んでかわされる場面や、カウンターを受けている際に戻り遅れてしまうシーンが目立つ。とは言え球際自体は強く、鋭いタックルでチームのピンチを救うこともある。
ドイツ代表でのポジションも盤石に
2021年9月にドイツ代表デビューを飾ると、その後も安定したパフォーマンスを披露して左サイドバック(左ウイングバック)のレギュラーに定着。今季はクラブでやや調子を落としているが、UEFAネーションズリーグではグループステージの全6試合に出場した。
ポジションを争うインテルのロビン・ゴセンスがクラブでのプレー時間を減らし、同じライプツィヒのマルセル・ハルステンベルクも度重なる負傷でコンディションを落としていることから、ラウムの代表での立場は盤石なものになりつつある。FIFA ワールドカップ カタール2022 (カタールW杯)でも、左サイドからの高速クロスを見ることができそうだ。
(文・加藤亮汰)