いよいよ開幕が迫るカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はFW町野修斗(湘南ベルマーレ)だ。

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 カタール・ワールドカップ(W杯)に出場する日本代表メンバーが発表される10日ほど前のことだ。4年に一度の大舞台について、町野修斗は「半年前まではテレビで観る側だった」と口にした。

 件の述懐は、W杯と自身との距離がこの半年のあいだに近づいたという実感を逆説的に表している。加速度的な成長を示す23歳は果たして、当初の26人には選ばれなかったものの、DF中山雄太の負傷離脱に伴い追加招集された。

 町野は今季、J1得点ランキング2位、日本人選手ではトップの13ゴールをマークした。なかでもにわかに注目を集めたのが、第14節から第18節だ。2得点を挙げてチームを勝利に導いた神戸戦を皮切りに、5試合で6得点を積み上げた。

 唯一、ノーゴールに終わった第16節・C大阪戦以外、チームが勝利を手にしている事実も意義深い。振り返れば今季の湘南は、町野がゴールを決めた試合はリーグ戦で負け知らずである。

 一気にゴールを量産したこの少し前、とあるインタビューで語られた言葉が印象深い。得点力の向上には何が必要かを問われ、町野は言った。

「覚醒。覚醒したいです」
 
 以降の軌跡は、まさしく覚醒と評していいだろう。背景には、湘南に加入し、J1を肌で感じた昨季の経験がある。

「去年のシュートを外したシーンを振り返ると、もう一歩運べたなとか、ひと呼吸おいて打っても良かったなというのが何個かあった。それに気付けたことで、ゴール前で落ち着くことが去年よりできていると思う」

 参考にしているという点取り屋の存在も見逃せない。ポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキだ。

「得点のパターンが豊富で、両足や頭、クロスからも決められる。ボールも収められるし、裏にも走れる超万能型。先生のような選手だと思っています。今季は試合会場までのバスの移動中に動画をけっこう見ていた」

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 今季の躍進を語るうえでは、仲間と築いた繋がりも欠かせまい。

「『町野に出せば決めてくれる』というチームのみんなからの信頼が13ゴールに繋がったと思う。チャンスが増え、僕が冷静に決めなければいけないという責任感も芽生えてきた。チームメイトのおかげで成長できたと思います」

 第33節・鳥栖戦が記憶に新しい。クロスからヘディングシュートを決め、さらに鮮やかなミドル弾を仕留めて早々に2得点を挙げた。自らゴールを奪う一方で、ペナルティエリアに進入するや、すかさずパスを選択し、決定機をもたらしもした。

 日本代表メンバーの発表を控え、ハットトリックも視野に入るなかで、最も得点の確率の高いプレーを町野は冷静に見極めていた。

「ゴールに貪欲にプレーしたい」と意欲を隠さない。かたや、「チームのためにまずは守備をして攻撃の起点になり、それがゴールに繋がれば」と語り、あるいは「シュートは常に意識していますが、冷静に状況判断することも大切」と釘をさす。
 
「誰とでも合わせられるのが僕の特長のひとつ」と自覚するように、周りと繋がり、活かし活かされるプレーヤーとしての奥行きは、その非凡な決定力とあわせて得難い才と言えるだろう。

 ゴールへの飽くなき希求と、チームに対する献身と。来るW杯においても、町野は陰に日向に存在感を放つに違いない。

取材・文●隈元大吾