FIFAワールドカップカタール2022開幕まで1週間を切り、各国が決戦モードに入っているが、今大会では偉大な記録が生まれることになる。それがワールドカップにおける個人の「最多出場記録」だ。
 
 日本では、GK川島永嗣(39歳)とDF長友佑都(36歳)が2010年の南アフリカ大会から数えて4度目のワールドカップを迎える。これは1998、2002、2006、2010年大会でメンバー入りした川口能活と楢崎正剛に並び、日本代表の歴代最多出場回数となるのだ。彼らは、出場大会数で見るとペレやディエゴ・マラドーナ、パオロ・マルディーニといった往年のレジェンドたちと肩を並べることになる。
 
 だが、もちろん上には上がいる。これまでワールドカップの歴代最多出場記録は5大会。16年にも渡ってチームが本大会に出場し続け、なおかつ選手自身もワールドカップメンバーに選ばれ続けなくてはいけない。そんな記録を持つのは、これまで4名。ドイツの英雄ローター・マテウス(1982, 1986, 1990, 1994, 1998)、メキシコの守護神アントニオ・カルバハル(1950, 1954, 1958, 1962, 1966)、同じくメキシコのラファエル・マルケス(2002, 2006, 2010, 2014, 2018)、そしてイタリアのGKジャンルイジ・ブッフォン(1998, 2002, 2006, 2010, 2014)だ。98年大会で出番がなかったブッフォンを除き、残りの3名は全5大会でピッチに立っている。
 
 さて、今回のワールドカップでは、そんな偉大な記録に並ぶ選手がいるので紹介していこう。

[写真]=Getty Images
 

■リオネル・メッシ(アルゼンチン代表)

出場5回目=2006、2010、2014、2018、2022

リオネル・メッシ

 
 言わずと知れたと歴代最高プレーヤーは「最後の大会なので、不安と緊張がある」と自身最後にして5度目のワールドカップに臨む。キャプテンとしてアルゼンチン代表を牽引するメッシは、2005年にA代表デビューを果たすと、翌年の2006年に18歳でワールドカップに初出場。グループステージ第2戦のセルビア・モンテネグロ戦で75分に投入されると、ピッチに立ってわずか3分でFWエルナン・クレスポのゴールをお膳立て。そして88分には自らもネットを揺らして、1ゴール1アシストの衝撃のW杯デビューを飾った。
 
 結局、2006年大会は19歳の誕生日となった6月24日の決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦にも途中出場するなど、計3試合に出場して1ゴール。準々決勝では出番がなく、チームもドイツを相手にPK戦の末に敗れた。
 
 次の2010年大会、メッシは背番号10を背負ってエースとして出場。チームはまたしても準々決勝でドイツの前に屈し、メッシ自身も全5試合にフル出場しながら無得点に終わった。この大会では合計29本ものシュートを放った同選手。これは1966年大会以降で無得点選手の最多シュート数だという。
 
 メッシが最も世界の頂点に近づいたのが2014年のブラジル大会だった。腕章を巻いたメッシは、グループステージ3試合で4ゴールを叩き出して決勝トーナメントに進出。そこからはスイス、ベルギー、オランダとの接戦を制して決勝に進出したが、またしても彼らの前に立ちはだかったのがドイツだった。延長戦までもつれたファイナルは、マリオ・ゲッツェの得点でドイツが優勝。メッシは大会MVPに輝くも、三度ドイツの前に涙を呑むことになった。
 
 前回の2018年大会はグループステージから難しい戦いを強いられ、何とか決勝トーナメントに進出するも、その大会を制することになるフランスの前にベスト16で散ることになった。メッシは全4試合に出場して1ゴール。これによりワールドカップ史上初めて、10代、20代、30代でゴールを決めた選手となった。
 
 今大会、メッシはマラドーナの4大会を抜いてアルゼンチン選手として史上初の5度目のワールドカップに臨む。だが、彼が狙う記録はそれだけではない。メッシはこれまでワールドカップで19試合6ゴール。もしカタールの地で決勝戦(もしくは3位決定戦)に進出して全7試合に出場すると、メッシはワールドカップ通算26試合に出場することになる。そうなればローター・マテウスが持つワールドカップの最多出場試合の記録(25試合)をも更新するのだ!
 

■クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル代表)

出場5回目=2006、2010、2014、2018、2022

クリスティアーノ・ロナウド
 

 メッシと共に歴代最高の一人に挙げられるポルトガルの英雄も、今大会が5度目の出場となる。メッシと同じく2006年大会に初出場したC・ロナウドは、グループステージ第2戦のイラン戦でワールドカップ初ゴールをマークする。当時の主将フィーゴが獲得したPKを任されたのは、フィーゴ自身やMFデコではなく、21歳のC・ロナウドだった。この大会で話題になったのはC・ロナウドの“ある行為”だ。準々決勝のイングランド戦、C・ロナウドは当時所属していたマンチェスター・Uの同僚であるFWウェイン・ルーニーが一発退場になった際にウィンク。これが物議をかもした。結局、ポルトガルは4位という好成績を収め、C・ロナウド自身も1試合を除く6試合に出場した。
 
 続く2010年大会はキャプテンとして出場し、4試合1ゴール。しかしチームは決勝トーナメント1回戦でスペインに0-1で敗れてベスト16で姿を消した。次の2014年大会はグループステージ初戦でドイツに0-4の大敗を喫したことが尾を引き、最終的に勝ち点4でアメリカと並ぶも得失点差で下回り、決勝トーナメントに進めなかった。それでもC・ロナウド自身はガーナ戦で決勝ゴールを奪い、出場した全大会でゴールという偉業を維持した。
 
 前回の2018年大会は、グループステージ初戦のスペイン戦(3-3)で3得点の大爆発。「33歳130日」でワールドカップにおけるハットトリックの最年長記録を打ち立てた。続くモロッコ戦でもゴールを奪い、チームはベスト16で敗退したがC・ロナウドは4試合で4ゴール。ワールドカップ通算17試合7ゴールとし、ペレ、ウーヴェ・ゼーラー、ミロスラフ・クローゼに続き、史上4人目となる4大会でゴールを決めた選手となった。
 
 そのため今回のカタール大会でもネットを揺らすことがあれば、C・ロナウドはワールドカップ史上初、5大会でゴールを決めた男となるのだ!
 

■ギジェルモ・オチョア(メキシコ代表)

出場5回目=2006、2010、2014、2018、2022

ギジェルモ・オチョア

 
 37歳のメキシコの守護神ギジェルモ・オチョアも今回が歴代最多タイとなる5度目のワールドカップだ。とはいえ、2006年と2010年大会は控えGKとして出番がなかったため、オチョアが初めてワールドカップでピッチに立ったのは2014年大会のこと。正GKとして出場して2試合でクリーンシートを達成し、チームのベスト16進出に貢献した。
 
 続く2018年大会には“神セーブ”を連発した。グループステージ初戦では、王者ドイツを相手に9本のセーブを披露してチームを1-0の勝利に導いた。この「セーブ9本」は、1966年大会以降でメキシコ人GKによる1試合の最多記録だという。さらにオチョアは0-2で敗れたベスト16のブラジル戦でも8本のセーブを記録。結局、出場4試合にもかかわらず、7試合に出場したベルギー代表GKティボー・クルトワと並び大会最多の25セーブを記録した。
 
 オチョアは代表通算132キャップ(11/16時点)。今年9月の代表戦で、メキシコの伝説的GKホルヘ・カンポス(129キャップ)を抜いて同代表のGKの歴代最多キャップ記録を更新した!
 

■アンドレス・グアルダード(メキシコ代表)

出場5回目=2006、2010、2014、2018、2022

アンドレス・グアルダード

 
 今大会のメキシコ代表には、5回目の出場となる選手がもう一人いる。それがキャプテンのMFアンドレス・グアルダード(36歳)だ。オチョアとは違い、グアルダードはこれまで全4大会でピッチに立ってきた。2006年大会のベスト16のアルゼンチン戦でワールドカップデビューを果たすと、2010年大会は3試合に出場。2014年大会になるとチームの主軸として全4試合に先発出場して、グループステージのクロアチア戦ではネットも揺らした。
 
 前回2018年大会も全4試合にスタメン出場し、これでワールドカップ通算12試合1ゴール。ラファエル・マルケスの19試合に続き、メキシコ代表としてはワールドカップでの歴代2位の出場数を持っている!

 歴代最多に並ぶ5度目のワールドカップを迎える4選手。カタールの地でどのような活躍を見せるのだろうか。

(記事/Footmedia)