[国際親善試合]日本1-2カナダ/11月17日/アルマクトゥーム・スタジアム(UAE)
FIFAランキング24位の日本は、カタール・ワールドカップ前最後の強化試合で、同41位のカナダと戦った。
この試合、遠藤や三笘、冨安などが怪我の大事をとってメンバーから外れ、板倉や浅野、田中ら戦線離脱していた選手がスタメンに立った。「調整」の意味合いが強かったとはいえ、やはりワールドカップに気分良く臨みたいことを考えても負けたくない一戦だった。
カナダは強豪とは言えないものの、ワールドカップ予選でメキシコやアメリカ、コスタリカを抑えて首位通過をしてきたチームである。そんなカナダに勝ってチームとして勢いを持ってドイツ戦に挑みたい――。そんな期待を抱きながら試合を注目して観ていた。
序盤は日本のプレスが効いていたし、柴崎のボールさばきからリズムを作りながら、狙い通りのゲームができていた印象だ。
その流れから8分に、右サイドでスタメン出場した相馬が、柴崎からの浮き球のスルーパスに対してタイミング良く相手の最終ラインを抜け出し、先制点を決めた。
相馬のゴールをきっかけに日本のゴールラッシュが見られたら……と思ったのだが、そう簡単にはいかないのがサッカーだ。
雲行きが怪しくなったのは、日本がリードを奪ってからだ。カナダのCKを迎えるたび、相手の「高さ」で負けてヒヤヒヤさせられるシーンが続く。21分に右CKからついに同点弾を奪われてしまったのだ。
セットプレーは、日本が改善すべき課題だ。ドイツが「高さ」を活かし、日本の急所を狙ってくることを容易に想像できる。当然、ドイツ戦ではセットプレーを与えたら、イコール失点を意味する。
それぐらいの覚悟を持って、ドイツに「時間」と「スペース」を与えないコンパクトな守備をしなければ、勝点を拾うことはできないだろう。
カナダ戦の話に戻れば、1-1になった後半、日本はさまざまなシステムをテストした。伊藤はサイドバックだけではなく、4バックのセンターバック、3バックの左センターバックでプレーし、鎌田はボランチという新たなオプションとして機能した。さらに残り5分からは、吉田を投入して3-4-3の布陣をテストしている。
本大会を見据えた「調整」ということを考えれば、新たなオプション作りは一定の効果を得ることができたと言えるだろう。
しかし、それ以上に大きな不安を感じてしまったのは、繰り返しになるが、セットプレーから2失点して逆転負けを喫したことだ。
誤解してほしくないのは、後半アディショナルタイムにPKを与えた山根のプレーを批判したいわけではない。
9月のドイツ遠征のエクアドル戦では、終盤に同じく谷口がペナルティエリアでファウルし、PKを与えた。その時は、GKシュミットのビッグセーブでことなきを得てスコアドレスドローに終わったが、カナダ戦ではそのままPKを決められて負けている。
PKを与えた山根が、その直前に柴崎のスルーパスから抜け出してゴールポストを叩く惜しいシュートを放った。それが決まっていたら、おそらく山根は今頃ヒーローになっていただろうし、日本はスピードを活かした、まさに狙い通りのカウンター攻撃で「耐えて忍んで勝点3」という戦いができたと、マスコミから評価を得ていたかもしれない。
チャンスのあとにピンチありではないが、そう考えると、勝負のあやというものは面白い。それがサッカーと言ったらそれまでだが、カナダ戦の逆転負けが良い方向に転がることを期待したい。
いよいよ、次は運命のドイツ戦だ。ドイツは、ワールドカップ前最後のテストマッチでオマーンに1-0でしっかり勝利した。前回のワールドカップ同様、その日も彼らのポゼッションは65%を記録している。
ドイツ戦は、ボールを握られることが予想される。フットボールの楽しさや本質を考えると、個人的には好きではないが、負けることも好きではない。
耐えて忍んで勝点3――。森保監督のもと、チーム一丸となって、コンパクトにフィールドを保ち、アグレッシブにプレーし、スマートに戦い抜いてもらいたい。サッカー大国から勝点を奪う日本代表の戦いを楽しみにしている。
【著者プロフィール】
藤田俊哉(ふじた・としや)/1971年10月4日生まれ、静岡県出身。清水商高―筑波大―磐田―ユトレヒト(オランダ)―磐田―名古屋―熊本―千葉。日本代表24試合・3得点。J1通算419試合・100得点。J2通算79試合・6得点。J1では、ミッドフィルダーとして初めて通算100ゴールを叩き出した名アタッカー。2014年からオランダ2部VVVフェンロのコーチとして指導にあたり、2016-17シーズンのリーグ優勝と1部復帰に導いた。以後、イングランドのリーズ・ユナイテッドや日本サッカー協会のスタッフなどを歴任。今年9月に古巣・磐田のスポーツダイレクターに就任した。
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