【専門家の目|佐藤寿人】ドイツ戦の鍵は「どれだけ我慢ができるか」

 森保一監督率いる日本代表は現地時間11月17日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでカナダ代表と国際親善試合を実施し、1-2で敗れた。23日のカタール・ワールドカップ(W杯)初戦を控えるなか、元日本代表FW佐藤寿人氏に運命のドイツ戦の展望を聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 カナダ戦はテストの意味合いが強い選手起用となり、最後の見極めがなされたと言える一方、出場を回避してコンディション調整に務めている選手たちもいるのが現状だ。

「カナダ戦で起用しなかった選手も含めて、メンバーはだいぶ固まってくると思います。あとはコンディションですね。バラつきは間違いなくあるので、本当の意味で26人のなかからチョイスしていくことになります。コンディションを見ながら、本当に最後の最後まで見極めないといけない。普段のW杯とは準備期間が違いますし、難しさはありますよね」

 絶対的な11人が決まっているわけではない現状だけに、コンディションとも相談しながら、相手のスタイルと自分たちの狙いに合わせて一戦ごとにメンバーを入れ替えていくことを佐藤氏は予想する。キーワードは森保監督の「総力戦」という言葉だ。

「初戦と第2戦、第3戦といろいろな状況を想定するなかで、26人を選んでいると思います。カナダ戦の前日会見と、練習が始まる時の森保監督の言葉も聞きましたが、やはり総力戦と言っていました。誰が出ても日本代表チームとして結果を出せる、全員の力が必要だという話でしたから、3試合でかなりの選手が起用されていくのかなと思います。3試合で一つでも多く勝ち点を取って突破を決めると考えた時、そういう考え(総力戦)にならないといけない。疲弊して3戦目という形だとなかなか難しいですから」

 重要な初戦で相対するのは、強豪ドイツ代表。カナダ戦を踏まえてまず修正しなければならない点は、やはりセットプレーの守備と指摘したうえで、ボールのあるエリアによって意識を変化させる重要性も説く。

「ウィークポイントを考えた時に、カナダ戦では実際にセットプレーで失点しています。自陣でのちょっとしたファウルからセットプレーを与えることも多かったので、ドイツは間違いなく狙ってくると思います。高さ、コンタクトの強度はセットプレーの守備で足りなかったので、準備期間で修正しないといけないポイントです。

 あとは自陣でファウルしないところですよね。どうしても『そこでボールを奪いたい』となってしまうんですが、それこそ本当に我慢して、プレーの選択をゴール方向から遠ざけるだけで十分だと思います。相手の陣地であれば奪いに行くことでコンタクトがあって、ファウルがあっても問題ないですが、自陣だと失点のリスクが出てしまう。そこは修正しないといけないかなと思います」

 したたかなドイツは、そうしたウィークポイントも的確に突いてくるだろう。しかし、佐藤氏は意外にも「劣勢にはならないかもしれない」という見方を示す。

「勇気を持ってしっかりボールを動かすことができれば、十分に勝つことも可能だと思いますし、僕ら外側から見ている人以上に、選手たちは決して引き分けるつもりもなく、勝つ可能性を最大値に高めるために初戦にベクトルを合わせていると思います。そのためにも、どれだけ我慢ができるか。我慢強くというのは単に相手の攻撃を受けるというわけではなく、相手が仕掛けることに冷静に対応しながら、しっかり自分たちのやりたいこともやっていくということです。

 必要以上にリスペクトしてしまうと、逆効果だと思います。普段どおりに自信を持ってやること、W杯という言葉に惑わされずに勇気を持ってやることが何より大事。今の代表選手たちは欧州の舞台で日常的にやっていますし、それだけの経験値はあります。僕は十分勝ち点1、勝ち点3が取れると思いますし、可能性は高いと思っています」

 4度のW杯優勝を誇るドイツだが、直近の国際親善試合オマーン戦では攻めあぐねて苦戦したという事実もある。過度に恐れて自ら反撃の芽を摘むのではなく、日本から仕掛けていって慌てさせる――。そんな展開が見られれば、一気にグループリーグ突破への展望が開けてきそうだ。(FOOTBALL ZONE編集部)