11月23日、日本代表はカタールワールドカップでドイツ代表との開幕戦を迎える。グループリーグは短期決戦で、何が何でも勝点を拾う必要がある。過去の大会を振り返っても、初戦に負けると厳しい。

 個人的には、「日本は能動的なサッカーを捨てずに戦える」と考える。

 フランクフルトで鎌田大地は守備のタスクもこなしながら、攻撃でも決定的仕事をしている。あるいは久保建英も、レアル・ソシエダで強豪相手に真っ向勝負でボールを握って渡り合い、ヨーロッパリーグではマンチェスター・ユナイテッドを撃破した。他に堂安律、三笘薫、さらにメンバー外になった旗手怜央も、レアル・マドリーと互角に戦い…。しかし、もはや是非はない。
 
 森保監督は「サッカーを捨てる」受身的戦いを選んでいる。プレッシング、リトリート、カウンター。26人のメンバー選考からして歪みが見えるほど、「森保のサッカー」をするための兵法である。

 無論、それも一つのアプローチだ。
  
 そこで布陣だが、GKはせめてシュミット・ダニエルに懸けたい。欧州戦線で奮闘。大柄な体躯を行かせるようになった。権田修一は総合力こそ高いが、降格チームのGKで、前哨戦のカナダ戦でも不安定さが如実に表れていた。

 バックラインは、屈強でソリッドな面々を揃える。酒井宏樹、吉田麻也、板倉滉、冨安健洋。これだけの面子をバックラインに揃えたことは、代表史上ない。冨安は代表ではセンターバックだが、アーセナルでは右サイドバックが定位置で、左サイドバックとしてもモハメド・サラーを完封し、能動的守備ができる。左サイドバック起用も一案だ。

 中盤も、まずは強力な堀、石垣となる。遠藤航、守田英正の二人で防御ラインを構築。バックラインの前に立ちはだかる。二人とも、欧州で実績を積んでいるMFで期待したいが、両者ともに脳震盪と筋肉系の違和感で、カナダ戦を見送り、不安は残る。控えには2部でのプレーでもすでに柴崎岳を上回る橋本拳人を招集すべきだったが…。

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 トップ下では鎌田大地が攻撃を司る。一本のパスで勝負を決められる。また、味方がポストで収めてくれたら、フィニッシュ精度も出せる。セットプレーのキッカーとしても有力。周りは馬車馬のように働いて、彼は来るべき攻撃時に備えて力をセーブするべきだ。


 トップには浅野拓磨、サイドは右に伊東純也、左に前田大然を先発に推す。彼らの使命はパワー、スピードを用い、相手を消耗させること。特に浅野、前田は「前半で十分」で体力配分を考えず、プレスをかけ、裏を取るために走り続ける。半ば捨て駒だ。
 
 後半途中に勝負で、左に三笘薫、トップに上田綺世を投入する。二人とも得点の気配を放つだけに、相手が焦れていたり、消耗していたり、混乱が起きていたら、ゴールの可能性はある。勝負に行くなら、鎌田をボランチに下げ、トップ下に久保建英、右に堂安律で乾坤一擲の勝負をかける。

 楽観的で、奇跡的な勝利パターンだが、0−0でも上々である。ドイツが決定機を外し、開幕戦特有の不調に喘ぐ。それを願い、選手の奮闘を祈る。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。