サッカー日本代表の歴史が動いた。23日にカタールワールドカップのグループステージ初戦が行われ、ドイツ代表に2-1で逆転勝利を収めたのである。

 1点ビハインドで迎えた75分、運命の歯車が動き出した。MF三笘薫が左サイドからドリブルでペナルティエリア左角まで進む。そして、ゴール方向へ切り込むと見せかけて内側を追い越したMF南野拓実にスルーパスを通す。

 南野がワンタッチで折り返したボールはドイツ代表のGKマヌエル・ノイアーに触られるが、こぼれ球は詰めていた堂安の足もとへ。三笘や南野とともに途中出場していた背番号8は「ごっつぁんです!」と、冷静に左足シュートを流し込んだ。

「あの局面でテンションの上がらないウィンガーにウィンガーのメンタルはないと思うので。0-1の状況で、ちょっとずつこっちに流れが来て、『俺がヒーローになる』と思ってピッチに入りました。そのイメージをこの4、5日ずっと持ってホテルで過ごしていたので、その通りになってよかったです」

 この試合の堂安は「ゾーンに入っていた」という。DFダビド・ラウムとの守備のマッチアップも「どこに来ても止める自信はありました」と完璧。ゴールシーンも、ボールがこぼれてくる場所へ自然と体が動いていた。

「最初のワンプレー、ツープレーくらいで球際で俺が勝ったところがあったと思うんですけど、あの瞬間にもう『今日はいけるな』と思いました」

 その直感を信じた結果が、75分のゴールにつながった。食事の席などでチームメイトたちに「俺が決めますよ。途中から出て」と言って回っていたという。それでもプレッシャーに押し潰されることはなく、有言実行で歴史的勝利のきっかけを作った。

「気負いすぎて悪かった経験がたくさんあるので、自然体でそれほど気負うこともなく、うまく力に変えて、頭の整理もできましたし、マインドセットもうまくコントロールできるようになっています。この大舞台でもあれだけリラックスしてプレーできるのは、いろいろな壁にぶつかったおかげだと思っているので。何か気負うことなくプレーできましたね」

 日本サッカーの歴史に残る一夜となったが、これで終わりではない。カタールワールドカップは始まったばかりで、日本代表にはグループステージ突破をかけた戦いが2試合残っている。まだ何も成し遂げたわけではない。

 堂安は「自分だけは自分のことを信じてトレーニングしていましたし、これでみなさんが僕の言葉を信用してくれると思うので、もっと大きいことを言って点を取ろうと思います」と宣言した。

 27日のコスタリカ代表戦に勝利すれば、日本代表の決勝トーナメント進出は大きく近づく。ベスト8を目指す戦いの中で、堂安のさらなるゴール量産に期待したい。

(取材・文:舩木渉)

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