「彰悟だったらどうする?」

 CBの大先輩、齊藤俊秀コーチからの質問に、自分だったらどう守るかイメージを沸かせながら、谷口彰悟はクールダウンのジョギングを齊藤コーチとともに行なっていた。

 大金星を挙げたドイツ戦の翌日もトレーニングに励んだ日本代表は、酒井宏樹と冨安健洋がそれぞれ足の違和感で不在のなか、先発組と出場時間の長かった浅野拓磨を含めた11人が軽いメニューを消化。それ以外のメンバーは強度の高い練習で汗を流した。

 ベンチでドイツ戦を見守った谷口もそのうちのひとりで、全体トレーニングを終え、ドイツ戦のシチュエーションを振り返りながら、齊藤コーチと守備対応の確認をしあっていたのだ。

「チームのコンセプトは試合に出る選手だけでなく、しっかり準備できていますし、次のコスタリカ戦も一緒だと思います。チャンスを得られるか分かりませんが、僕もいつ出ても良い準備をしています」
 
 チーム一丸となって戦ったドイツ戦。勝利のためにという想いを誰もが抱え、仲間のゴールを全員で喜んだ姿には強い団結力が感じられた。谷口も勝利の瞬間にいの一番にピッチの仲間のもとへ駆け寄っている。

 一方で当たり前であるが、プロ選手であるからこそ出場できない悔しさもある。

「やっぱり悔しい気持ちを持ちながら、これは全員、そうだと思いますが『俺を出せよ』と考えている選手しかいないと感じます。ただそこは常に準備していくしかないというか、その気持ちをどこにぶつけるでもないですし、毎日毎日の練習でやるしかない。とにかく出番が回ってきた時にちゃんとしたパフォーマンスをするために準備をし続けるしかない。

 みんな悔しい気持ちやピッチに立ちたい想いはあるけど、その気持ちを、なんて言うだろう……難しいですが、超越するというか、そんなのも当たり前で、そのうえでまた良い準備をしていく。そのレベルの話だと思っていますし、そういうことができる選手の集まりだと感じています」

 コスタリカ戦はローテーションを組む可能性が高い。もし出番が巡ってくれば、谷口にとっては31歳で迎える念願のワールドカップデビューである。もっとも彼はその時を熱い想いを持ちながら冷静に待ち続けるはずである。チームのために行動し続けながら、準備は決して怠らずに。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト特派)
 
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