現地時間12月1日の2022年カタール・ワールドカップ(W杯)グループステージ最終戦・スペイン戦(2-1)のミラクル勝利から早くも2日が経過。同5日のラウンド16のクロアチア戦が翌日に迫ってきた。

 日本代表は2日のオフを経て、3日から再始動。同日は久保建英(レアル・ソシエダ)が体調不良で欠席するというアクシデントがあったものの、酒井宏樹(浦和レッズ)が10日ぶりに冒頭から全体練習に参加。ランニングやストレッチ、ボール回しなどを消化していた。

 クロアチアの左FWに強烈な打開力を誇るイバン・ペリシッチ(トッテナム)がいることを考えると、森保一監督も酒井を頭から起用して4バックで戦いたい気持ちが強いはずだ。

 だが、復帰したばかりの彼をいきなり強度の高いラウンド16で先発させるのはリスクが高い。となれば、スペイン戦同様、3-4-2-1の布陣でスタートする確率が高い。

 累積警告による出場停止の板倉滉(ボルシアMG)のところに冨安健洋(アーセナル)を入れ、久保のところに相馬勇紀(名古屋グランパス)、あるいは南野拓実(モナコ)を配置すれば連係面は問題ないだろう。
 
 こうしたなか、クロアチアへの守備で重視すべきポイントを考えてみると、1つは中盤の制圧だ。相手のMFにはアンカーのマルセロ・ブロゾビッチ(インテル)、インサイドハーフのルカ・モドリッチ(レアル・マドリー)とマテオ・コバチッチ(チェルシー)という百戦錬磨のトリオが並ぶからだ。

「どの選手もどこのエリアでもプレーできて、すごく動ける。試合の最後まで走り切れる能力もある。ホントに簡単じゃない相手」と田中碧(デュッセルドルフ)も警戒心を募らせていた。

 彼らを自由にさせてしまったら、どこからシュートが飛んでくるか分からないし、失点につながるリスクが高い。特にモドリッチは徹底的につぶさなければいけない。そこはブンデスリーガのデュエル王の遠藤航(シュツットガルト)が主に担うことになる。

「期待していてください」とエース封じに自信を見せた背番号6の出来が日本の命運を左右することになりそうだ。
 
 2つ目のポイントはクロス対応。スペイン戦のアルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリー)の失点場面も外からのボールからだった。クロアチアもアンドレイ・クラマリッチ(ホッフェンハイム)ら空中戦に強いアタッカーが揃っているだけに、細心の注意を払わなければならないだろう。

「ボックス内でより人の意識を高めることは麻也(吉田=シャルケ)さんに伝えましたし、滉君とも話をしました。ボックス内で点を決めるのは結局、人なので、その意識は少し強めていいかな」と冨安も神妙な面持ちで語っていた。

 クロスを上げさせない外の守り、ゴール前でフリーにさせない組織をいま一度、再確認して、クロアチア戦ではより徹底したいところだ。

 もう3つ目はリスタートの守備。セットプレー時には188センチの長身DFデヤン・ロブレン(ゼニト)や189センチの左SBボルナ・ソサ(シュツットガルト)らも前線に上がってくるうえ、ペリシッチはロングスローも投げてくる。これまで以上に警戒態勢を高めなければ、頭越しに決められる恐れもある。

 板倉が不在となれば、180センチ台後半の選手は吉田、冨安の2人だけ。へディングの競り合いに強い酒井もいないとなれば、やはり分が悪い。そこは認識したうえで、対応策を講じていくことが肝要だ。
 
 決勝トーナメント以降は延長・PK戦まで考えたマネジメントが必要になってくる。消耗度の高くなる終盤はミスも起こりがちで、リスタート時にポッカリと穴が生じることも考えられる。そういった事態が起きないように、つねに集中力を維持し続け、相手を凌駕するような走力と運動量、アグレッシブさを示し続けるというのは非常に難易度が高い。

 だが、史上初のベスト8という新しい景色を見ようと思うなら、普通のプレーではダメなのも確かだ。

 これだけ過密日程の中、どこまで選手たちのフィジカル・メンタル面が持つか分からないが、最後の最後は「絶対に勝ち上がりたい」という気力が大切ではないか。そのあたりは長友佑都(FC東京)や吉田らベテランがしっかりと若い世代に伝えてくれるはず。

「まずは守りから入らなければいけない」と田中も強調していた。ここまで3戦続けて先に失点している日本にしてみれば、今回はその悪循環を断ち切り、先手を取りたいところ。粘り強く、スキを作らない守りで、クロアチアに心理的重圧を与え、焦燥感を抱かせ、最終的には日本が勝ち切る…。そんな理想的なシナリオをぜひ現実にしてほしい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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