日本代表はスペインとドイツを連破し、グループE首位で決勝トーナメント進出を果たした。サッカーは時に信じられないことが起こるスポーツだが、その全ての現象に理由がある。
ドイツ戦と同じく、日本のゲームプランはシンプルだった。しかし選手たちはそれをモチベーションを極限まで高めて遂行した。グループステージ3戦を経て、攻撃面に課題を抱える日本のこの快進撃は、チーム全体で一つになって向かっていくスピリットが原動力になっているといっても差し支えないだろう。
日本の弱点は、ボールを持ったときに何をしたらいいかわからないことだ。一方の強みは、攻撃陣のスピードであり、守備の規律だ。森保一監督のゲームプランは、この2点を踏まえた非常にクレバーなもので、DF5枚、MF4枚で守備ブロックを敷き、相手の攻撃陣を挟み込んだ。スペインは完全にその蜘蛛の巣に捕まり、11分に先制した後も抜け出すことができないままだった。
日本はドイツ戦と同様に、前半を最少失点で持ちこたえ、勝負に出る時を待っていた。その合図が後半頭からの堂安律と三笘薫の投入で、ハーフタイム明け直後、全てが加速した。
この日、スペインの両サイドバックはいつもより攻撃参加を自重していたが、日本が高い位置でボールを奪いゴールに迫ると、守備陣は慌て始めた。リスクを負う姿勢を前面に押し出すことで、守備に人数を割き、カウンターを狙う日本のサッカーは一転して、スペインにとって危険な代物に変貌した。
日本の攻撃は、走ることに特化している。そしてその武器を強力なものにしているのが、全選手が献身的にコミットすることで成り立っている守備だ。後半開始直後、その守備力を土台に、チャンスを作り、立て続けに得点に繋げた。しかもその走ることに特化した日本の攻撃は決して侮れない。
特筆に値するのは、スピード豊かなドリブルとフリーランを武器に、イメージがシンクロしたコンビプレーは、チャンピオンズリーグをはじめ数々の大舞台を踏んできたスペイン守備陣を翻弄したことだ。伊東純也、浅野拓磨、三笘、堂安といった選手は、森保監督の“イケイケ采配”を追い風に相手がどこであろうと決定的なチャンスを作る能力を持っている。
5バックとスピード豊かな攻撃陣。森保監督は、ゲームプランをシンプル化することで、日本が抱える攻撃面での課題をカモフラージュし、なおかつ全選手が高いモチベーションと守備意識を持って遂行することで強みに変えている。中でも、吉田麻也と板倉滉の両CBの働きはこのスペイン戦でも光った。
確かにミスもあった。それはトップレベルの選手ではないのだから致し方ない。そんな中でも、日本が勝負どころで攻撃的に振る舞えるのは、この2人をはじめとした守備陣が後方から懸命に支え続けているからに他ならない。
日本が相手にダメージを与えるには、ボールをほとんど持たないことが必要だ。一見矛盾しているが、そこに連動したハイプレスと流動性が伴ってくると、攻撃陣が持ち前のスピードを発揮する。
森保監督はさらにその威力を高めるために、後半途中までカードを温存し、疲弊した相手守備陣を痛めつけるという方程式を編み出した。まさに勝負師である。それがこのW杯における日本の戦い方であり、決勝トーナメントでもそのアイデアとともに心中するはずだ。
シンプルだが、全選手が一心不乱に戦うことで強力なプランに昇華している。日本のこの快進撃を止めるのは決して簡単ではない。
分析・文●アレハンドロ・アロージョ(ドリブラブ)
翻訳●下村正幸
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