個の力がありながら組織的な戦い方ができるクロアチア代表の攻略法を考察

 クロアチア代表の最大の強さはどんな相手にも怯まず、侮らないことだ。欧州の強豪国の中では400万人と国の規模も小さく、旧ユーゴスラビアから独立してからも困難を乗り越えて、国際社会で認められてきた。そうした国民性がサッカーにも反映されている。準優勝した前回のロシア・ワールドカップ(W杯)では、セミファイナルまですべて延長戦を制して決勝に進んだ。そうした接戦を粘り強く勝利に結び付けられるメンタリティーがある。

 日本代表の森保一監督も認めるように、勝利のために自分を犠牲にできるハードワーカーが揃っており、その象徴がMFルカ・モドリッチだ。高度なテクニックを持ち、イングランド1部トッテナムやスペイン1部レアル・マドリードで長く活躍してきた最大のスターでありながら、37歳になっても人一倍ハードワークする。

 おそらく、4試合続けてのスタメンになるであろうモドリッチを中心にMFマテオ・コバチッチ、MFマテオ・ブロゾビッチという攻守の強度が高い中盤がFWイバン・ペリシッチ、FWアンドレイ・クラマリッチの両翼を生かして、ゴール前に迫力を生み出す。バックラインは20歳にして屈強さを備えた左利きのDFヨシュコ・グヴァルディオルと百戦錬磨のDFデヤン・ロヴレンが分厚い壁を作る。

 ドイツ代表戦やスペイン代表戦の前半のような劣勢にはならないが、なんとなく押し切られるような形で、抜け目なく得点されるのが嫌なパターンで、攻守のメリハリを付けながら、その時間帯でやるべきことをチームで共有し、目線を揃えていきたい。そのなかでも、最も気を付けたいのが「モドリッチ・ライン」だ。

「モドリッチ・ライン」というのは筆者が名付けているだけだが、要するにモドリッチを起点としたゴールまでの道筋のこと。それを直接の受け手と出し手だけでなく、フィニッシャーや周囲でサポートする選手たちも同じ絵を描くようなゴールがクロアチアは多い。モドリッチの影響力もさることながら、個の力がありながら組織的な戦い方ができるクロアチアのカラーを表している。

 クロアチアはコバチッチの展開力やサイドのシンプルな仕掛けからもチャンスを作れる。モドリッチを徹底マークすれば万事解決という話でもないが、モドリッチの縦パスやサイドチェンジのパスから2、3本でゴールに結び付く「モドリッチ・ライン」をできるだけ根本から断ち切っていきたい。

 クロアチアに対しては40~50%前後までボールを持てると予想するが、ドイツやスペインのようにはっきりとしたプランで方向を定めにくく、クロアチアは必要に応じてポゼッションもカウンターも、ショートパスもロングボールも使い分けられる厄介さがある。しかも、これまでの3試合から森保ジャパンもかなり分析されているはずだ。

グループリーグ3試合で1失点のクロアチア、リードを許すと厄介な相手

 そうした相手に対しては大きな枠を決めるだけでなく、ある場所ではディテールまで踏み込んで、森保監督やスタッフと選手が共有するべきだろう。「モドリッチ・ライン」を断ち切る守備のプランはもちろん、ハイラインが基本となる相手の背後を取ってゴールに迫るためのプランもそうだ。またボールを持てる時間がドイツ戦やスペイン戦より長くなるなかで、どこから崩してゴールに迫っていくかも定めておきたい。

 DF吉田麻也キャプテンが、お互いに分析ができているなかでプランA、プランB、プランCぐらいは用意しておくべきだと語っていたが、その使い分けをフレキシブルに求められるのがクロアチアとの戦いだ。またドイツ戦とスペイン戦の経験から、前半でリードを奪われても後半で巻き返せるというイメージは選手もサポーターも持っているかもしれない。しかし、森保監督も認めるように本来はリードされないで勝負をかけて行けるのが理想であり、グループリーグ3試合で1失点のクロアチアは1-0からそうそうに隙を与えてくれないだろう。

 ラウンド16のここまでの4試合は先制した側がそのまま勝利しているエビデンスもある。やはり先制点でリードを奪った側が有利というのはグループリーグよりも強まるので、先に点を与えないように戦いながら、接戦で最後まで競り負けないようにしていく根気が問われる戦いになる。当然、120分も想定した戦いになるが、90分の中で何とか仕留めたい。

 推奨布陣は3バックを推す声も見られるが、相手が3トップ気味であること、スペイン戦よりボールを握る展開を考えると4バックで、ハイプレスをかけやすい4-2-3-1がイメージしやすい。その中でクロアチアのスカウティングも想定して、これまで使っていない組み合わせも織り交ぜたい。

 その意味で、ここまで途中出場しかないMF南野拓実、一度も出番が無いボランチのMF柴崎岳にもチャンスがあると考える。またペリシッチとクラマリッチというクロアチアのサイドアタッカーをいかに封じるかが鍵になるので、ペリシッチの元インテル時代の同僚であるDF長友佑都、ブンデスリーガでクラマリッチをよく知るDF伊藤洋輝を当てるか。ただ、DF酒井宏樹もスタンバイOKとのことなので、長友と酒井は2人で最大120分という想定もできる。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)